2009 Fiscal Year Annual Research Report
賃金制度の今日的展開-年功・職務・成果主義およびジェンダーをめぐる総合的研究
Project/Area Number |
20530479
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
高橋 祐吉 Senshu University, 経済学部, 教授 (10072662)
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Keywords | 成果主義 / 能力主義 / 職務給 / 年功賃金 |
Research Abstract |
平成21年度は、医療・福祉産業における賃金制度の「成果主義」的改革の動向とそれに対する労働者・労働組合の対応に関する実態調査を進めた。これまでの調査・分析によって明らかになりつつある知見は、90年代~2000年代に医療・福祉職場において「成果主義1を掲げ進められた賃金改革は、職能資格制および多分に恣意的・曖昧な考課指標の混入や処遇差別を回避しえない人事査定制度の導入によるものであり、「職務」ないしは「仕事」基準による透明・公正な賃金決定と言い難いものであった。そして、経営側からの自律性を維持する労働組合や労働者は、勤続昇給を基本とする従来的な公務員型の制度をこそ公正な賃金制度とみなす立場からこうした賃金および人事労務管理制度改革に対して抵抗している。 このことは、「成果主義」と旧来的な「能力主義」との異質性を強調する、最近約10年間における労働社会学・社会政策学分野における賃金制度をめぐる有力な学説に対する重大な異論を提起しうる根拠となる可能性をもつと考えられる。 また、連携研究者と行っている研究会(関東社会労働問題研究会)においては、範囲職務給制度をとる米国の賃金制度においても、労働組合は歴史的にseniorityによる昇給を主張し、査定昇給を主張する経営側との間で重要な争点となってきたこと、専門的ホワイトカラー職たる教員の賃金制度は経験年数と学歴を基準として賃金水準が決定されるものであるといった知見を得ることができた。これらもまた、米国型職務給と「年功」原理の異質性を強調する最近の研究動向にあって、重要な批判的問題提起をなしうる可能性を提供するものと思われる。
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Research Products
(3 results)