2010 Fiscal Year Annual Research Report
賃金制度の今日的展開―年功・職務・成果主義およびジェンダーをめぐる総合的研究
Project/Area Number |
20530479
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
高橋 祐吉 専修大学, 経済学部, 教授 (10072662)
|
Keywords | 賃金制度 / 労務管理 / 成果主義 / 能力主義 / 人事考課 / 年功賃金 / 職能給 / 職務給 |
Research Abstract |
第三年度においては、第二年度までの文献研究および実態調査の結果をふまえつつ、連携研究者とさらに文献研究会や個別調査の検討会を重ね、さらに長野県の病院・福祉施設における成果主義的人事・賃金制度改革の状況について聞き取り・資料調査を行った。これまでの文献研究・理論的歴史的考察の成果をふまえて、この第三年度の調査を中心にこれまでの実態調査結果を分析した結果、次のような知見を得ることができた。 成果主義賃金制度は「能力開発主義」を実現するものという触れ込みで導入されたにも関わらず、実際にはそうしたものとなってはいないこと、人事考課の恣意性は強固に人件費抑制という目的のために導入されるものではないと唱えられてきたにもかかわらず、現実には人件費抑制効果が現れていること、現実の成果主義賃金制度が処遇の安定性や評価の納得性を依然として欠如していること、などである。 こうした分析から浮かび上がってきたものは、まさに漂流し続ける成果主義的賃金制度の姿であり、またかつて能力主義から成果主義への転換が日本の人事労務管理史上画期的な質的転換と言われることもあったにも関わらず、実は成果主義と能力主義との距離がさほど遠いものではなかったという事実である。その結果として現実の成果主義は度重なる手直しを余儀なくされているわけであるが、その行き着く先は、人事考課における成績考課を重視した職能給の見直しあたりに落ち着くのではないかと考えられる。成果主義的賃金制度の導入プロセスが示唆するのは、日本の労働者の「フェアネス」に対する感覚を無視して賃金制度を改編ことの困難さであると言えよう。
|