2009 Fiscal Year Annual Research Report
寄せ場的労働市場の拡散と不安定就労問題に関する社会学的研究
Project/Area Number |
20530500
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
中根 光敏 Hiroshima Shudo University, 人文学部, 教授 (40212089)
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Keywords | 寄せ場 / 労働市場 / 不安定就労 / 非正規雇用 / プレカリアート / 労働運動 / 労働問題 / 貧困 |
Research Abstract |
四年間の研究の第二年目として,本年度は,まず、本研究の課題を現代社会の文脈に位置づけるために、バブル経済崩壊以降に起こった日本社会における労働・雇用問題の変容を整理するとともに、グローバル化と関連づけるための理論的枠組みを文献研究で行った。とくに、近年、社会的アジェンダとなっている非正規雇用をめぐる法改正に関する議論を構成主義的アローチによって整理するとともに、欧米における非正規雇用問題とその変容とを比較検討した。次に,現代の不安定就労問題の実態を明らかにするために,前年度の予備調査をふまえて、東京,京都,広島,札幌において,参与観察調査、インタビュー調査、資料収集などフィールドワークを行った。具体的には、現代的な労働・雇用問題の実態へと迫るために、サービス業労働者や女性労働者が抱えている問題に関して、労働条件・雇用形態の詳細・生活上抱えている問題などに関して、調査を行った。その結果、寄せ場的労働市場の拡散は,法的な枠組みを超えてサービス業へと拡大するとともに、非正規労働者間においても経済的・文化的格差が大きくなっており、非正規労働者の多くが所得などの経済的な問題だけでなく、生活上の問題や自らのアイデンティティなど多様な「生きにくさ」を抱えていることが明らかになった。これらの「生きにくさ」は単に個人的な問題ではなく、潜在的な社会的排除として社会問題化されるべき情況になってきていると考えられる。これらの実態をふまえ、次年度以降、さらなる調査研究を継続していきたい。
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