2008 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルワーカーの「主体性」に関する実証的研究〜「実践の科学化」を目指して
Project/Area Number |
20530508
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
衣笠 一茂 Oita University, 教育福祉科学部, 准教授 (50321279)
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Keywords | ソーシャルワーク / 原理と価値 / 自立と自己決定 / 近代市民社会 / カント哲学 / 近代的人格論 / 実践の科学化 / 構造主義的アプローチ |
Research Abstract |
今年度は、主として文献研究を中心に、従来のソーシャルワークの価値についての議論のレビューし、ソーシャルワークの価値の理論がどのような構造を持って展開されてきたのかを概括した。ソーシャルワークの価値基盤についての理論的考察が行われてた1970年代から現在に至るまでの欧米の先行研究を概括し、ソーシャルワークの価値理論がカント哲学に依拠した「自立し、自己決定できる」個人のあり方を是認する、というテーゼに収斂されることを分析した。 その上で、このようなソーシャルワークの価値理論が現状の実践が相対している事象にしては有効に機能していない現実について指摘し、その問題の根源を「自立し、自己決定する」ことが出来る個人を目指す、という近代市民社会が求める個人像への無批判な固着にあることを論究した上で、葛藤に満ちた実践が相対している現実の中にこそ、その限界を乗り越える可能性があることの論理を明らかにし、「実践の科学化」による新たなソーシャルワークの価値理論の構築の必要性を明示した。 さらに、「実践の科学化」の具体的な方法としての質的研究方法についても先行研究をレビューし、ソーシャルワークの価値理論の新たな構築に向けてどのような研究方法論が最適であるのか、の考察を行った。その結果、フリック(Flick,U)が提唱する「構造主義的アプローチ」に基づき、本研究の仮説的前提を構築すると共に、エピソード・インタビュー、理論的コード化、結果の妥当性の担保といった具体的な研究方法論を確定した。その上で、佐藤郁哉による「事例・コードマトリックス」の分析技法に依拠しながら、「実践の科学化」を展開するための具体的な調査設計を行うことが出来た。
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