2010 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルワーカーの「主体性」に関する実証的研究?「実践の科学化」を目指して
Project/Area Number |
20530508
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
衣笠 一茂 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (50321279)
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Keywords | ソーシャルワーク / 原理と価値 / 共同性の価値 / 社会関係の媒介 / 合意形成 / 豊僥化 / エスノグラフィー / 主観的意味 |
Research Abstract |
平成22年度は、平成21年度に行った実証研究の結果を踏まえ、析出された「関係構築の原理」の基盤にある「価値】の論究を行った。そして、その結果考察された「共同性の価値」に基づく、新たなソーシャルワークの「主体性」のあり方を提示することを試みた。 このソーシャルワークの主体性の具体的な内容についての論究とは、近代的な「自立し、自己決定する個人」だけに価値をおくのではなく、誰もが存在の発する「意味」に対して拓かれている、という多様な「個」の能力とその価値を認め、そしてそれら多様な能力に基づく存在の様式がさまざまに関わり合うことから生成される「意味の豊かさ」をくみ取り、その「意味」を人々の生きる社会のなかに伝え、媒介してゆく「開拓的な社会関係の実践者」として、ソーシャルワーク実践を再定義しようとする試みである。 その上で、ソーシャルワークが具象化しようとする社会のあり方を、この「多様な存在の意味を許容する、真の意味での豊饒な社会」に求めた上で、岡村重夫による社会福祉とソーシャルワークの主体性論を弁証法的に止揚しながら、「多様な意味の社会的再分配装置」としての「媒介」と「合意形成」を主要な機能とする、ソーシャルワーク実践の具体的なあり方を提示した。 さらに、このソーシャルワークのあり方を検証するために、中津市社会福祉協議会による「渦疎地域の地域づくりプロジェクト」と、大阪府社会福祉協議会による「社会貢献事業」の二つのソーシャルワーク実践のエスノグラフィーを題材に、提出されたソーシャルワークの主体性についての論理の検証を行い、研究結果の妥当性を担保した。
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