Research Abstract |
本研究は,児童養護施設の生活と発達の実態をふまえた「子どもの権利」教育用教材・指導法・評価法の開発を目指しているが,3年計画の初年度として今年度は,児童養護施設における「子どもの権利ノート」の活用実態を明らかにするための調査を行った。鳥取県内5所の児童養護施設に協力を呼びかけ,職員については「子どもの権利ノート」(以下「ノート」)の活用状況について聞き取り調査をし,「ノート」は全施設で配布はされているもののその活用については十分とは言えないこと,「ノート」の内容と活用方法について改善の余地があることを明らかにした。ついで,県内全児童養護施設の小学生から高校生132人に対して,個別インタヴュー調査を実施し,以下のことを明らかにした。「ノート」をもらったことを自覚している児は,小学生68%,中高生90%であったが,もらったという児のうち自分で持っていると答えた児は,約半数であった。また,「ノート」の文中の用語について,「施設」を理解している児は小学生22%,中高生66%であった。権利侵害があった場合相談できると書かれている「児童相談所」の場所について指摘できる児は,小学生36%,中高生51%であった。さらに,施設職員が子どもの秘密を守ることについての文章を読み取れた児は,全体で40%,思想・信条・宗教の自由については,13%であった。また,「性的いやがらせ」について中高生に尋ねたところ,「知っている」と答えた児は,29%であった。こうした「ノート」理解の結果は,「ノート」の内容や表現,説明や活用方法の指導など,さまざまな点で改善の必要があることを示しており,本研究の目指す教材開発の意義を明らかにしたと言える。
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