Research Abstract |
本研究は,児童養護施設児の生活と発達の実態をふまえ,「子どもの権利」教育のための教材・指導法・評価法を開発しようとするものである。そのため,今年度はこれまでの子どもの実態調査結果を踏まえ,試作版「子どもの権利」クレイアニメと絵本(たっくんとグリンピース)について,6人の児童に対し提示し,理解可能性等の検討を行った。そして,職員と子どもとが1対1で読み聞かせする絵本の開発を当面の課題とした。また,絵本を155人の職員に提示し,読み聞かせ後子どもとどのようなことを話してみたいか等の質問をしたところ,「食べ物を大切にすること」「嘘などつかずに正直であること」「説明すればわかってもらえること」など,多様な結果が得られた。これは,権利条項に即して「子どもの権利」について1つのことを伝えようとする「子どもの権利ノート」とは異なる絵本の可能性を示したものと考えられる。さらに,絵本「たっくん うそついちゃった」を作成し,2冊を77人の子どもに読み聞かせし,インタヴューを実施した。その結果,多くの子どもが,登場人物の笑顔や雰囲気,会話を感じ取りながら,自分自身も安心したり,うれしく思ったり,「自分でもできるかもしれない」と自身と重ね合わせたりしていることがわかった。ついで,この2冊の絵本について児童養護施設職員17人に対してインタヴュー調査したところ,16人から絵本が「子どもの権利」教材として役立つと思うという回答が得られた。これらの結果から,「子どもの権利」絵本が「ノート」とは異なり,職員と子どもとの多様な話し合いを生み,権利について多面的な理解をもたらすという意義が明らかにされた。
|