2010 Fiscal Year Annual Research Report
市場化・分権化時代の就業支援政策の有意味性と公共性に関する教育・労働社会学的研究
Project/Area Number |
20530786
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
筒井 美紀 法政大学, キャリアデザイ学部, 准教授 (70388023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 由紀 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (30334262)
阿部 真大 甲南大学, 文学部, 講師 (60550259)
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Keywords | 就労支援 / 若者支援 / 公共性 / 分権化 / メゾ・レベル |
Research Abstract |
今年度は、1.基礎自治体における若者支援・就労支援政策の現状と課題、2.政府の「ジョブ・カード制度」の効果と政治的迷走、3.ジェンダー視点から見た政府の若年就労支援政策、について検討してきた。 1.メゾ・レベルの観察・分析から明らかにされたのは、支援が構造的ジレンマにあるということである。自治体のジレンマは、労働法制と行政組織法によって規定されており、その財政構造は「子ども・若者育成支援推進法」と矛盾している。また各支援機関は、当事者に寄り添いつつ、「外部社会」への移行を促すという課題で、特に成果を求められる委託事業で腐心している。だが関係者は、手をこまねいているわけではなく、その相対的自律性によって柔軟な転用戦略を駆使すると同時に、社会「本体」の変革意識を持ち続けている。とはいえ労働市場との関係ではなかなか進捗が見られない。 2.について:「ジョブ・カード制度」は、日本の公共職業訓練史上、非常に新しい仕組みであり、労働供給側のみならず、中小企業を雇用の受け皿として強くするものである。だが、この変革的ビジョンは、それを解釈する文化的資源の偏りゆえ、しばしば了解されない。それは「事業仕分け」における本制度の廃止決定に、端的に現れていた。所与の労働市場を前提に、労働者をどうemployabieに変えるかという発想しかない。 3.厚生労働省による、フリーターやニートのデータ提示で特徴的なのは、男女計になっていることだ。その政治的理由としては、男女別で表象すると、若年女性の就労支援への、保守的な人びとの合意調達が却っていっそう難しくなることが考えられる。これは、2つの代償を払わねばならない。(1)若年労働力に関する本質主義的認識の、ジェンダーに敏感な分析に対する優越を、許容しかねない、(2)「ジェンダー平等」という権利論系の主張が、「ソフトな恫喝」においては功利論系の主張に席を譲らねばならない。
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Research Products
(9 results)