2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530822
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
宮下 俊也 Nara University of Education, 教育学部, 准教授 (50314521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大熊 信彦 奈良教育大学, 国立教育政策研究所, 教育課程調査官 (20370083)
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Keywords | 音楽科教育 / 音楽鑑賞 / 批評 / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
本研究における20年度の小目的は、以下の6点であった。(1)文献研究により「批評」の概念規定を行う。(2)文献研究により「批評能力」の教育的意義の明示を行う。(3)米国カリフォルニア州カリキュラムにおける批評の位置づけ、及び実践状況について、米国研究者へのインタビューを行い、学会で報告する。(4)批評能力育成の先進実践事例を、米国カリフォルニア州Somis Union Schoolの授業を対象に分析する。(5)分析結果に対して、日本との比較を視点に考察する。(6)以上を論文化する。 (1)(2)については、まず、音楽鑑賞の意義を10点に整理した。それをさらに要約し、次の3つを位置付けた。すなわち、(1)鑑賞は受容という自由な面があるものの価値評価や批評がその意義として存在していること、(2)鑑賞は主体である鑑賞者と対象である音楽との関係において主体が新しい意味を発見するなど積極的に対象に関わるものであること、(3)鑑賞は鑑賞者の感性による知覚、感情、それ以外の客観的なものによって行われるということ。さらに、音楽鑑賞における批評の意義を、音楽の形式的側面の知覚と内容的側面の感受→それを根拠にした評価→他者への言語による伝達、という構造で捉え、そのそれぞれとこの構造が音楽科教育において培う「批評能力」であり、鑑賞の教育的意義として定義した。 (3)(4)(5)(6)については、David Connor教授に対するインタビュー及び、Scott Murphy教諭の授業分析より(共に研究協力者)、加州でも4.0の実践は途上にあること、また同州における先進的な実践においては、音楽の諸要素に対する知覚とそれに対する学習集団での批評と共有、既有の言語を用いた音楽概念のラベリング、音楽用語を用いた批評、ポートフォリオによる演奏批評、などを幼稚園から高等学校まで、それぞれの発達段階に即した教育方法によって実践されていることがわかった。以上を奈良教育大学研究紀要論文、及び日本学校音楽教育実践学会紀要に課題研究報告としてまとめた。
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