2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540263
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
棚橋 誠治 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 教授 (00270398)
|
Keywords | ヒッグスレス模型 / 余剰次元 / 非線形シグマ模型 / カイラル摂動論 / 電弱精密測定 / Zbbバーテックス / KKモード / ユニタリティ |
Research Abstract |
非線形シグマ模型に基づいた標準模型を超える模型として、脱構築ヒッグスレス模型の研究を行った。この模型はスピン0のいわゆるヒッグス粒子を含まないが、電弱対称性の破れ、すなわち素粒子質量の起源を説明することのできる面白い可能性である。標準模型ではヒッグス粒子の交換が縦波電弱ゲージ粒子散乱のユニタリティーを保っているのに対し、ヒッグスレス模型においてはスピン1のカルッツァ・クライン粒子の交換が縦波ゲージボソンのユニタリティーを保っている。 平成20年度の研究ではカイラル摂動論に基づいた系統的な方法を用いて、ループレベルの輻射補正まで含めた詳細な計算を行った。その結果、現在の電弱精密測定がこの模型のパラメータにきびしい制限を与えていることを発見し、成果をレフェリーつき専門誌に発表した。また、関連して、Z→bb崩壊における同様な詳細計算を行い、プレプリントとして発表した。こちらの成果についてもレフェリーつき専門誌への掲載がすでに決定されている。これらの成果は、LHCなどコライダー物理におけるヒッグスレス模型の実験的検証について、非常に大きな示唆を与えるものであり、今後さらなる研究が必要な領域となっている。 また、縦波Wボソン散乱における散乱振幅のユニタリティーについて考察し、ヒッグスレス模型におけるベクトル粒子の相互作用について、いくつかの新しい和則を見出した。将来的に、この和則を実験的に検証することで、素粒子質量の起源についてより深い知見を得ることが可能である。こちらの成果についてもレフェリーつき専門誌にすでに掲載されている。
|