2008 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線と中性子を併用する硬磁性体の3次元磁気モーメント密度分布観測法の開発
Project/Area Number |
20540331
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
伊藤 正久 Gunma University, 大学院・工学研究科, 教授 (90124362)
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Keywords | 放射光X線 / X線磁気回折 / 磁気モーメント / 磁気形状因子 / スピン磁気形状因子 / 軌道磁気形状因子 |
Research Abstract |
KEK-PF-BL3Cビームラインに設置したX線磁気回折実験システムにおいて、あらたに試料結晶方位の微調整機構を冷凍機に整備した。本実験システムを希土類化合物CeRh3B2へ適用し、主としてCe原子の4f電子に由来する磁気形状因子を測定した。X線磁気回折のLS分離特性を利用し、磁気形状因子をスピンモーメント成分(スピン磁気形状因子)と軌道モーメント成分(軌道磁気形状因子)へ分離して測定することに初めて成功した。 本試料結晶は六方晶でありc軸が磁化困難軸である。本実験で用いる電磁石の2Tの磁場では磁化はab面内に向き、散乱面内に磁化を向かせる設定となるX線磁気回折実験において、測定可能な逆格子点はhkOシリーズとなる。 H20年度の実験結果は以下のとおりである。1)測定されたスピン磁気形状因子は負の値を、軌道磁気形状因子は正の値を示した。2)双方の磁気形状因子ともに奇数指数を含む逆格子点では偶数指数に比べ小さな値を示した。3)軌道磁気形状因子は、偶数指数め逆格子点では孤立原子モデルの双極子近似理論曲線に良くのっているが、スピン磁気形状因子は結晶方位依存性が大きく原子モデル曲線から大きくずれていた。1)は磁気モーメントの主成分が軌道モーメントであることを直接的に示すものである。2)の結果はRh原子が僅かながら磁気モーメントを持つことを示唆している可能性がある。3)は、軌道モーメントとスピンモーメントの実空間分布が異なり、前者が等方的なのに対し後者は異方的であることを示唆する。以上CeRh3B2のスピン・軌道磁気モーメントの実空間密度分布に関する初めての知見を得た。
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