2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540371
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小西 哲郎 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (30211238)
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Keywords | Boltzmann-Jeans理論 / エネルギー等分配則 / カオス / 拘束系 / 溶媒 / 非線形物理学 / 高分子 / 生体高分子 |
Research Abstract |
●本研究は、多自由度系に生じる保存系カオスの、熱とは異なる揺らぎとその系の相空間構造の関連を探り、多体系のダイナミクスに新たな知見を得ることを目的として掲げてきた。この中で特に、鎖状多体系においてその末端部に運動エネルギーが過剰となる現象を発見し、その原因の解明と応用を探ってきた。●質点が剛体の棒で結合された鎖では熱平衡状態においてこの過剰性が発現する。質点が硬いばねで結合された鎖では、熱平衡へ緩和するまでの過渡現象としてこの過剰性が現れる。緩和時間はBoltzmann-Jeans理論によりバネ定数のべき乗の指数関数として評価することが出来た。 ●2011年度は、この鎖が溶媒と相互作用している場合に同様のエネルギー過剰が見られるかどうかに注力した。これは、鎖状多体系の例として高分子やタンパク質などを想定した場合、それらは溶媒に囲まれていることが多く、そうした環境で同様の現象が見られるかどうかを確認するためである。その結果、 1.溶媒の存在下でも同様の末端部エネルギー過剰が発現する。 2.具体的な条件としては、鎖を初期にランダムな形状で静止させておいて、溶媒粒子をランダムに衝突させた場合にも末端部のエネルギー過剰が発現する。 事がわかった。上記1.により、溶媒に囲まれた環境での高分子やタンパク質でも同様な末端部エネルギー過剰が見られる可能性があることがわかった。また、2.は、鎖にエネルギーを外部からランダムに与えた結果、末端部が選択的にエネルギーを得ることになった。きわめて興味深い全く新しい現象であり、今後力を入れて探求したい。
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