Research Abstract |
精密赤色蛍光年代測定装置の開発を目的とした2年目の今年度,開発をほぼ終了した。新装置には昨年度からいくつかの新機軸を加えた。まず,光電子増倍管(PMT)にRTL検出に優れたGaAsP/GaAs光カソードと,バックグラウンドを低減させる電子冷却システムを備えるH7421-40(浜松フォトニクスK.K.)を新たに採用した。また,Kenko R-60とKenko IRCL65Lのフィルター組み合わせた結果,昨年度使用したPMT R649Sと比較し,約2倍の検出感度の向上に成功した。また,加熱部にも安定加熱を保障するため,昇温10C/秒の遅い速度に設定し,試料への着実な熱伝導を確保した。また,SAR法測定を可能とするため,装置に小型X線照射装置(Varian社,VM)を導入した。その結果,50W,0.1Aで5.9Gy/mの放射線強度を確保した。さらに,単粒子測定のため,バックグラウンドを低減できる銀製試料ホルダーを用意し,加えてホルダーを覆う黒雲母シールドの使用により,黒体放射によるバックグラウンドの低減することを試みた。 以上の装置の改修を進めた結果,一層の高感度化と実用性に優れた装置を完成させることができた。 昨年度から進めたToya火砕流による石英単粒子の試験的測定から本装置が十分に機能したので,Toya火砕流の上下3層準のSAR法による年代測定を進めた。その結果,最下位に位置するToya火砕流には基盤岩類に由来すると推定される異質な石英が見出された。異質石英の年代は238000年-761000年であり,本質粒子の年代(90000-122000年)と大きく異なることが明らかとなった。石英単粒子の年代は火砕流の真の年代を知る上でも重要であることが明らかとなった。
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