2010 Fiscal Year Annual Research Report
更新世テフラの石英単粒子による精密赤色蛍光年代測定
Project/Area Number |
20540440
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
鴈澤 好博 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40161400)
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Keywords | 赤色熱蛍光年代測定法 / 赤色年代測定装置開発 / 石英 / 単粒子年代測定 / 洞爺カルデラ / 火砕流 |
Research Abstract |
赤色熱蛍光年代測定法が30万年から数万年前の更新世中期と呼ばれる時代の年代測定法に優れた方法であることに注目し,火山噴出物に含まれる石英を対象に年代測定を進めた。測定にあたり,赤色熱蛍光年代測定装置の開発改修を進め,日本独自の技術力により,石英粒子1粒から年代測定が行える性能を追求した。また,新たな測定法(390度の一定温度で石英を加熱し続ける)もできる機能を装置に盛り込んだ。研究計画では,研究を3段階に区分し,第1段階の平成20-21年度は装置改良と測定プログラムの開発を進めた。第2段階の21年度後半は装置の試験運転とプログラム改良を行い,測定装置の性能試験を進めた。第3段階の22年度は実用的な測定を行い,実験成果を得るとともに,成果の論文化を進めた。これらの実験成果はほぼ申請時に計画した通りの進行であり,実験成果も海外の査読論文に2論文を投稿したことで,達成したと言える。その内,Quaternary Geochronologyに投稿した論文では次のような成果が得られた。石英単粒子による年代測定実験に用いた試料は洞爺カルデラ起源の火砕流であり,石英粒子44粒子の年代測定を行った。その結果,33粒子が火砕流のマグマから由来した本質石英で,9万年から12万年の年代を示したが,他の10粒子は外来粒子と考えられ,23万年以上の古い年代を示す粒子群であった。本質石英群の年代はこれまで地質・地形調査などから推定されていた年代,10-12万年とよく符合した。この結果は,これまで年代測定法である1回の測定に多数の粒子を用いる方法は,外来粒子を含めて測定している可能性が高いことを示している。今回の成果は,今後石英単粒子による赤色熱蛍光年代測定法の基礎研究となることが予想される。本研究は科研費による研究目的を十分に達成したと自己評価している。
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