2009 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体・強磁性金属界面の電子構造とスピン注入効率:有機スピン素子をめざして
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20550015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 弘幸 Kyoto University, 化学研究所, 助教 (00283664)
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Keywords | 有機半導体 / 有機・金属界面 / 電子構造 / 角度分解X線光電子分光法 / 変量解析 / 埋もれた界面 / 分子性固体 / 分極エネルギー |
Research Abstract |
強磁性金属と有機半導体で構成される有機スピン素子の実現を目指し、強磁性金属と有機半導体の界面電子構造とスピン注入効率に相関を見出すことが本研究の目的である。本年度は、金属と有機半導体の界面電子構造を調べる手法に注目して研究を進めた。 金属と有機半導体の界面電子構造を調べるには光電子分光法が用いられる。これまでの研究では、有機半導体薄膜の膜厚を増やしながら表面のエネルギー準位を調べるという方法が広く用いられてきた。これは、実際の界面電子構造を調べるのが困難であるため、いわば界面電子エネルギー準位の代用として行われてきた手法である。本来であれば、「埋もれた界面」の電子準位を調べる必要がある。 本研究では、角度分解X線光電子分光法(ARXPS)のデータを、多変量解析(Target Factor Analysis)により解析することで、金属・有機半導体の「埋もれた界面」の電子準位が調べられることを明らかにした。この手法では、同時に表面とバルクでの電子準位の違いも観測できる。 金属と有機半導体の界面電子構造は、有機半導体デバイスの性能を左右することがら多くの研究がおこなわれている。それにもかかわらず電子構造を決定する界面現象についてはわからないことが多い。本研究は、金属・有機界面に残されている多くの未解決問題の解決に寄与しうる新たな実験手法として注目を集めている。 一方の表面とバルクでの電子準位シフトは、光電子放出過程で有機固体中に生成したホールが周囲の分子の分局により安定化が表面とバルクにより異なるために現れる現象である。これについては、近年ドイツを中心に、有機固体中での電荷の局在性などの本質的な問題と関わる現象として盛んに議論されている。本研究の手法は、これらの議論の根本データを提供するものである。
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Research Products
(10 results)