2010 Fiscal Year Annual Research Report
異化的鉄還元を利用した新たな重金属含有排水処理システムの構築
Project/Area Number |
20560509
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
岩堀 恵祐 静岡県立大学, 環境科学研究所, 教授 (40183199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関川 貴寛 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (20511728)
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Keywords | 異化的鉄還元 / マグネタイト / 嫌気性集積培養系 / 重金属耐性 / リン酸塩 / 重金属含有排水 / フェリハイドライト / 磁性 |
Research Abstract |
異化的鉄還元細菌によるマグネタイトの形成は、pHや酸化還元電位、電子供与体などの各種環境因子により影響を受ける。 本年度は、昨年度までに構築した鉄還元集積培養系を用いて、マグネタイト生産に及ぼすリン酸塩の影響を検討した。大型バイアル瓶(250mL容)にリン酸溶液(終濃度:0~20mM)を添加した培養実験から、培養14日目に0~10mMでほぼ同量の鉄還元量が示されたが、10mMでは鉄還元速度が約1/2となり、20mMでは鉄還元は行われなかった。これは、リン酸イオンがフェリハイドライトに化学的に吸着したことで、鉄還元細菌との接触阻害もしくは電子の移動阻害が起こったためと推測された。また、形成されたマグネタイトは、リン酸塩濃度により粒径、結晶性および磁性が異なっていたので、化学合成法の代替としての適用可能性が期待された。 次に、鉄還元集積培養系への重金属添加実験(添加濃度:1.0mM、1.5mM)により、集積培養系の重金属耐性を検討した。その結果、Fe(III)の還元速度は低下するが、Mn、SeおよびCrに対する耐性が強いことが明らかとなった。また、マグネタイト粒子のFe(II)とFe(III)の組成比がほぼ1:2と理論値に近いことから、これら重金属はマグネタイト形成に影響を及ぼさないといえる。一方、CdとCuが存在する各培養系では、0.5mMの濃度でも、Fe(III)の還元は行われなかった。この原因は、異化的鉄還元細菌に対する生体毒性が直接的に作用していることが示唆された。 以上のことから、異化的鉄還元集積培養系を利用した重金属含有排水処理のシステム構築に重要な知見が得られたものと考える。
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