2011 Fiscal Year Annual Research Report
中学校空間における居場所の構造化-生徒の空間選択の仕組み-
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20560568
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
西村 伸也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50180641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 鷹志 東京大学, 大学院・工学研究科, 名誉教授 (20024234)
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Keywords | 教科教室型 / 生徒の行動観察 / ホームベース / 教室館の移動 / 学年差 / 個人の生徒 / 集団の回避 / 休み時間 |
Research Abstract |
本研究は、生徒が学校の中につくりあげる居場所を対象として、その居場所と係わる生徒の環境行動の特徴を、時間・選択という視点から捉えることを目的としている。 福井市立至民中学校を対象として、居場所の形成を捉えるためのアンケート調査と8:00から17:00の学校生活の時間中での生徒の行動観察調査を行った。「時間・空間の多様な選択」の特徴を詳細に捉えるために、記録のための写真・ビデオの撮影と図面への活動内容と位置のプロットを行い、生徒の居場所と行動とを同時に記録する方法をとった。特に、教室や廊下を居場所とする生徒集団の特徴的な行動様態に注目する。 集団と個人の接触・回避という2つの場面での行動を選択場所とともに記録・分析した。ホームベースとロッカーの配置、通路の幅がそれぞれ異なるホームベース空間が計画されている至民中学校では、向かい合うホームベースで準備する生徒の行動に大きな違いが確認された。広さが変化する通路幅に応じて、生徒は移動の位置や準備の場所を巧みに選択し、混雑時にはそれぞれの空間構成に合わせて行動を変化させ、生徒がより準備しやすい空間・状況をつくる工夫をしていることが明らかになった。 さらに、至民中学校での生徒行動は、教室・オープンスペース・ベランダの位置によってその様態が大きく異なっており、クラスの生徒による空間の占有や他クラス生徒との接触・交流を行う場になるベランダ、通行量の多少に連動して生徒の交流及び滞留行動が変化するホームベース廻りの通路空間等が確認された。 このように、学年との関係や空間構成の違いによって、多様な移動や滞在の仕方が形成されていることが捉えられており、生徒はそうした様々な状況下で、自分の居場所を固定せずに使い分けながら、学校空間と生徒集団との折り合いをつけていることが調査データの分析から明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は大きな災害があり、調査の実施が遅れることが予想されたが、主要な調査を予定通り7月に終了して、研究計画全体は順調に進展している。特に、この調査で分析された学年の違いによる生徒行動の変容は、教科教室型の学校では顕著に現れていることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
教科センター方式の中学校でも、異学年型教科センター方式や併設型教科センター方式等その空間構成と学校運営方式に違いがあり、生徒の行動や居場所選択は異なっている。その特徴を調査からさらに詳しく捉えること、特別教室型中学校での生徒行動と比較することで、その居場所選択の特徴を分析して、中学校の設計に資する提案を行っていく。
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