2010 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的遺伝子発現解析を用いたバクテリアの増殖再開メカニズムの解明
Project/Area Number |
20570006
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
牧 泰史 大阪医科大学, 医学部, 講師 (60401733)
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Keywords | 大腸菌 / マイクロアレイ / 増殖 |
Research Abstract |
バクテリアの生育は、栄養環境の悪化に伴って、対数増殖期から定常期へと移行する。この間、細胞は生理的、構造的に様々な変化を経て栄養枯渇環境に適応する。一方、定常期のバクテリアは生育環境が改善すると増殖を再開するが、実際の増殖開始までには、lag phaseと呼ばれる増殖準備期を必要とする。我々のこれまでの研究から、ゲノムDNAの複製に必要と考えられる時間を大きく超えて、長時間のlag phaseを要する場合があることが解ってきた。これは増殖停止に至る過程で、増殖に関わる機能構造の一部が失われ、増殖再開の過程でこれらが再構築を必要としていることを示している。では、定常期では何が失われ、lag phaseでは何がどのような順序で発現すると、増殖能が再度獲得されるのだろうか。この解明を目的として、本年度は、多様な栄養条件下における大腸菌の生育とマイクロアレイを用いた網羅的転写産物解析を行った。その結果、枯渇する栄養源が異なると定常期の生存率やlag Phaseの長さに大きな違いが見られること、lag Phaseが長くなる条件ではリボソームの分解が進み、寿命が短くなることを確認した。このことにより、栄養環境の悪化による増殖停止の状態には、リボソームを温存して長寿命化する適応と、リボソームを積極的に分解して短寿命化しながらも生命維持に努める適応があり、増殖再開のメカニズムも多様であることが明らかとなった。このようなリボソームの分解に至るシグナルや、それ以外の細胞内機能構造の変化は、未だ不明である。今後バクテリアの環境応答の解析をさらに進めることで、増殖再開のメカニズムを解明していきたい。
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