2009 Fiscal Year Annual Research Report
生体内エネルギー代謝恒常性調節機構解明によるメタボリック症候群へのアプローチ
Project/Area Number |
20580103
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡辺 光博 Keio University, 医学部, 准教授 (10450842)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷川原 祐介 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (30179832)
伊藤 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40252457)
杉崎 太一 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00468480)
森本 耕吉 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10468506)
|
Keywords | 生活習慣病 / エネルギー代謝 / 胆汁酸 / オミックス解析 |
Research Abstract |
胆汁酸・FXRアゴニストは、生体内において共にFXRのリガンドとなり、様々な遺伝子発現をコントロールする。近年、FXRは糖・脂質代謝改善薬の標的因子として注目され、研究開発が進められている。最近、FXRアゴニストは、脂肪細胞においてインシュリンシグナルを増加させ脂肪細胞の分化を誘導し、血糖を改善するとの複数の報告がある。しかし、我々の結果は、FXRアゴニスト投与により食餌量を変えずに体重、脂肪組織重量の有意な上昇を観察した。糖尿病の指標では空腹時血糖、インシュリン値の上昇、OGTT,IPITTの悪化を呈し、耐糖能異常、インシュリン抵抗性の悪化が観察された。この結果は、既報の糖尿病改善効果と大きく異なるものであった。また、病理的解析により脂肪肝、脂肪細胞肥大化、BATにおける顕著な脂肪蓄積が観察され基礎代謝の低下が観察された。既報のFXR活性化による脂肪蓄積亢進作用の結果である可能性が考えられたため、NIH3T3-L1細胞を用い、胆汁酸、FXRアゴニストの脂肪細胞分化に対する影響を検討した。脂肪細胞に分化後、FXRアゴニスト、ケノデオキシコール酸をそれぞれ添加した分化培地にて1週間培養し、サンプルとして用いた。その結果、細胞へのグルコースの取り込み量、細胞への脂肪蓄積は変化しなかった。さらに、mRNAを抽出し脂肪細胞への分化の際、発現誘導される遺伝子マーカー(PPARγ、FAS、GLUT4、AC1、ACC2)を定量PCRにて測定した結果、いずれの遺伝子も胆汁酸やFXRアゴニストにより変化せず、既報とは異なる結果であった。さらに、インシュリンシグナルに重要なAkt、IRS-1のリン酸化がFXR活性化により亢進していなかった。これらのことからFXRアゴニスト投与による肥満誘導は脂肪組織へ直接的に作用しているのではないということが示唆され既報と異なるものであった。現在、FXRシグナル経路、FGFシグナル経路からの原因究明を行っている。
|