2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20580192
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東藤 孝 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (60303111)
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Keywords | 水産学 / 発生・分化 / 卵形成 / 脂質 / サケ科魚類 |
Research Abstract |
本研究は、サケ科魚類のカットスロートトラウトをモデルに用い、魚類の卵母細胞における脂質取り込み(油球形成)機構を解析することを目的としており、本年度は以下の項目について解析した。 1.細胞膜上に存在する2種の脂肪酸受容体(SR-BIとCD36)のcDNAを卵巣よりクローニングして発現解析を行った結果、双方とも卵母細胞で発現していることを確認した。 2.硬骨魚では7つのタイプが存在することが知られている細胞内脂肪酸輸送体(FABP1、2、3、6、7、10、11)のうち、FABP1と7、11の3つが卵巣で発現していることを明らかにした。さらにこれら3タイプのFABPのうち、FABP1と11が前卵黄形成期の卵母細胞で発現していることが分かった。 3.これまでの研究結果から、魚類の油球形成機構について次のような新たなモデルが考えられた。血液中の超低密度リポタンパク(VLDL)が卵濾胞の顆粒膜細胞でリポタンパクリパーゼの作用により代謝され、VLDL中のトリアシルグリセロールから遊離脂肪酸(FA)が生ずる。生じたFAは、卵母細胞膜上のSR-BIもしくはCD36によって卵母細胞内に取り込まれる。取り込まれたFAは、FABP1もしくはFABP11によって粗面小胞体に運ばれ、そこで中性脂質が合成されて油球として卵母細胞に蓄積される。 4.上記の経路以外の可能性として、卵母細胞で発現するリポタンパク受容体(LR)について解析した結果、これまでに知られていない新規のタイプを含めて複数のLRが卵母細胞で発現していることが分かった。このことから、卵母細胞における油球形成機構には複数の脂質輸送経路が存在することが示唆された。
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