2008 Fiscal Year Annual Research Report
海洋温暖化がエイ類の生物量、分布および行動生態に及ぼした影響の解明
Project/Area Number |
20580205
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 敦子 Nagasaki University, 水産学部, 准教授 (10310658)
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Keywords | エイ類 / トビエイ亜目 / 東アジア / 行動生態 / ナルトビエイ |
Research Abstract |
本研究は、干潟河口域におけるエイ類の分布特性と生物量およびエイ類相の変遷を明らかにした上で、なぜエイ類による二枚貝の漁業被害が目立つようになったのかを明らかにするため、海洋温暖化により卓越するようになった種の行動生態を解明することを目的としたものである。最終的には、海洋温暖化がエイ類の生物量、分布および行動に及ぼした具体的な影響を解明し、様々な環境変化に順応した管理方策を築くための基礎とすることを目指す。平成20年度の研究成果は以下の通りである。(1)有明海において、種々の伝統漁法を利用してエイ類を採集し、同定・測定・解析等を行った。その結果、夏季には湾奥部で数種のアカエイ属、ナルトビエイ、トビエイが優占し、湾中央部では周年ウチワザメ、コモンサカタザメ等が優占することがわかった。これらエイ類全体の生物量は、過去に比べて増加した可能性がある。(2)ビニールチューブ製のダート式タグを用いたエイ類の標識放流調査を繰り返し行い、再捕データを蓄積した。(3)東アジア河口域生態系におけるエイ類の分布状況とその変遷を明らかにするため、これまでほとんど調査されたことがなかった中国大陸沿岸域(香港、海南島沿岸域等)でトビエイ亜目のエイ類を採集し、生物測定と同定を行った。これらの海域ではエイ類の種多様性が高く、同定の困難な種が多く出現したことから、可能な限り文献を収集して検討を重ねた結果、既存の知見に基づき外部形態のみで同定を行うことは出来ないことが明らかとなった。そのため、mtDNAによる判別を試みた。(4)深刻な漁業被害をもたらしているナルトビエイをモデルとして行動調査を行った。その結果、少なくとも夏季の間は、一日の大半の時間を浅海域(表層から水深6mの範囲)で過ごしていたことがわかった。
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Research Products
(13 results)