Research Abstract |
ニーム(Azadirachta indica;インドセンダン;センダン科)はインド原産の常緑樹であり,インド伝承医学であるAyurvedaにおいては最も重要な植物のひとつとされている.本研究は,ニームのさらなる高度利用を図るために,ニーム成分の探索と生物活性機能(メラニン産生抑制活性,抗腫瘍活性など)の評価を行い,ニーム成分を素材とした新たな優れた機能性分子の創製を目的とする.本年度は,ニーム種子n-ヘキサン抽出物から22種,また,ニーム葉部エタノール抽出物から10種の合計32種のリモノイド型トリテルペンを単離した.これらのうち10種は新規化合物であり,構造を明らかにした.これらについてヒト腫瘍細胞株における細胞傷害活性試験を行い,種子抽出物からの3-Deacetyl-1-de-O-tigloylsalannin-1-en-3-one(1),及び葉部抽出物からのNimonol(2),Nimbolide(3),28-Deoxonimbolide(4)に強い細胞傷害活性を確認した.さらに,昨年度の研究で種子メタノール抽出物から単離している7-O-Benzoylnimbocinol(5),Epoxyazadiradione(6),7-Deacetyl-7-benzoylepoxyazadiradione(7),Gedunin(8),7-Deacetyl-7-benzoylgedunin(9)について,HL60細胞を用いてのHoechst 33342染色,Annexin V-PI二重染色及びDAPI染色を行い,核の凝集・断片化,Phosphatidylserine露出細胞群の増加及びSub G_1ピークへの細胞の堆積を確認した.化合物(7),(20)についてWestern blot法を行い,Caspase-3,-8,-9の活性化を認めた.これらの結果より,(5)~(9)のHL60細胞に対する傷害活性は,主にアポトーシス誘導によるものであり,(7)及び(9)が誘導するアポトーシスはデスレセプターおよびミトコンドリアの両経路によることが示唆された.以上,化合物(5)~(9)は新規抗腫瘍剤あるいはそのシード化合物として有望とみなされる.一方,本年度にニーム抽出物から単離した化合物についてB16メラノーマ細胞におけるメラニン産生抑制試験を行い,幾つかの化合物に優れた活性を見出している.
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