2009 Fiscal Year Annual Research Report
セレン蛋白質GPx4による新規細胞増殖制御機構の解析
Project/Area Number |
20590067
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
今井 浩孝 Kitasato University, 薬学部, 准教授 (50255361)
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Keywords | GPx2 / 細胞死 / 脂質酸化 / アポトーシス / ネクローシス / オートファジー / リピドミクス |
Research Abstract |
リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(PHGPx)は生体膜に生じたリン脂質ヒドロペルオキシドを直接還元出来る細胞内の主要な抗酸化酵素である。PHGPx欠損マウスは7.5日で胚致死となり、3.5日受精卵やMEF細胞でもPHGPxが欠損すると細胞死が誘導される。この細胞死の詳細なメカニズムを明らかにするために、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞を樹立し、酸化脂質メタボローム解析および細胞死メカニズムの詳細な解析を行った。本細胞死は、カスパーゼ阻害剤、Bcl-xlの発現でも抑制されず、致死の過程でシトクロームCの放出や、AIFの放出も見られず、典型的なアポトーシスではないことが明らかとなった。またネクローシスの指標であるHMGB1の核内からの放出も見られず、タイムラプス解析からも細胞の膨潤は見られず、ネクローシスでもないことが明らかとなった。第3の細胞死経路として、オートファジーが知られているが、細胞死の過程でLCIII-2の蓄積が見られ、オートファジーが観察された。しかしATG5のノックダウン細胞でも細胞死は誘導されたので、オートファジー性細胞死でもない新規の細胞死であることが明らかとなった。この細胞死は、スーパーオキシドや、過酸化水素を消去するような酵素の発現や阻害剤では抑制できないが、脂質の酸化反応を抑制するビタミンE、トロロックスなどで抑制された。この新規細胞死における酸化脂質の変化について、LC-ESI-MSを用いて、酸化脂質メタボロームの解析を行ったところ、アラキドン酸およびDHA含有ホスファチジルコリンヒドロペルオキシドの生成が細胞死誘導の分岐点で見られ、その生成は、トロロックスの前処理により完全に抑制された。PHGPxとビタミンEは細胞死誘導因子であるリン脂質ヒドロペルオキシド生成を抑制し細胞生存のための必須因子であることが示された。
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