Research Abstract |
肩関節の構造の解剖学的検索により,肩関節の腱板構造が従来いわれてものと大きく異なることがわかってきた.棘上筋ならびに棘下筋の上腕骨停止部位についてはすでに発表していたが,これがこれまでの腱板断裂の手術の方法に大きく影響することが明らかになった.また,肩甲下筋の上腕骨停止部位は,一般的に小結節内側面であるといわれていたが,実際にはかなり上部にまで広がっていることがわかった.さらに,この肩甲下筋の上部停止腱が上腕二頭筋腱の安定化に寄与していることも明らかにされ,肩甲下筋腱の停止部の断裂などのときの修復に対する手技の検討が必要であることもわかった. 棘下筋については停止部のみならず,その形態にも注目した.この筋は,肩甲下窩に起始する斜走部と肩甲棘に起始する横走部に分けられ,これらは神経支配的には独立傾向が見られた.また,この横走部は棘下筋と棘筋の中間に位置するものと考えられ,この筋の形態学的ならびに比較解剖学的意義について今後検討していく予定である. 関節内靱帯としての上・中・下関節上腕靱帯については,上・中・下のそれぞれについての断面の連続切片を作製し,膠原線維のI型ならびに皿型について免疫組織染色によってその性質を調べた.その結果,これら3つの靱帯の構造は同じではなく,下関節上腕靱帯は腱に近い構造であったが,上関節上腕靱帯は疎性結合組織の不均一な束であり,上腕二頭筋腱の走行を補助するための構造であることがわかった.従来,靱帯として一まとめにされていた構造であるが,それぞれの部位によって差異があることが明らかになり,手術的な修復時に注意が必要であるごとがわかった. 以上のような結果を,比較解剖学的ならびに臨床応用へと結びつけるべく,より詳細なデータを採取している.
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