2010 Fiscal Year Annual Research Report
摂食抑制ホルモンNesfatin1の脂肪分化抑制機構の解明と肥満治療への応用
Project/Area Number |
20590247
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
岡田 秀一 群馬大学, 医学部, 講師 (20260474)
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Keywords | 脂肪細胞分化 / Nucleobindin-2 |
Research Abstract |
【方法と結果】3T3-L1細胞を用いて検討を行った。未分化な状態及び脂肪細胞へ分化した状態のいずれにおいてもNucleobindin-2が発現していることをウエスタンブロットで確認したが、脂肪細胞へ分化するとその発現量は分化前に比して減少していた。次に、3T3-L1細胞のconditional mediumとヒトの血漿中にはNucleobindin-2が存在することをウエスタンブロットで確認したが、血漿中には凡そ50nMのNucleobindin-2が存在すると計算された。そこで、Nucleobindin-2の生理的な機能を検討する目的で、種々の濃度のGST-Nucleobindin-2を3T3-L1細胞の培養液中に、脂肪細胞への分化(Dexamethasone、インスリン、IBMXのカクテルを用いた)開始48時間前から、24時間または48時間ごとに添加し、分化開始後8日目にoil red染色で脂肪細胞への分化の程度を評価した。その結果(対照はGST添加群)、50nMで明らかな抑制効果を得た。RT-PCRにてPPARγ、adipsinのmRNA量を、ウエスタンプロットにて蛋白発現量を定量的に評価したところ、oil-red染色と同様の結果を得た。Nucleobindin-2からはNesfatin-1が形成されるので、GST-Nesfatin-1、GST-△Nesfatin-1[Nucleobindin-2からNesfatin-1部分を除いたもの]について同様の検討を行ったが、各々には脂肪細胞への分化抑制作用は認められなかったので、Nucleobindin-2が作用を発揮するためには、その全長が必要であることが明らかとなった。 【考察】生体内に於けるNucleobindin-2の主たる産生部位は未解明だが、Nucleobindin-2には脂肪細胞への分化抑制作用が存在する事が示された。 【本研究の意義】Nucleobindin-2はNesfatin-1の前駆物質であるが、Nucleobindin-2自体も分泌シグナルを有しており、本研究で示した様に培養液中や血漿中に存在している。既に、インスリン分泌への作用が報告されているが、本研究は新たな生理作用を報告するものである。現在、固有の受容体探索を行っており、脂肪分化の新たな機序解明、肥満の新規治療法の開発に向けて本研究は大きな可能性を含んでいると考えられる。
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