2008 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍抑制遺伝子BHD産物が制御するシグナル伝達系の解明
Project/Area Number |
20590316
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小林 敏之 Juntendo University, 医学研究科, 准教授 (40260070)
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Keywords | BHD遺伝子 / folliculin / mTOR / AMPK / Tsc2 / mTORC1 / Birt-Hogg-Dube症候群 |
Research Abstract |
本年度はBHD産物(folliculin=Flcn)のリン酸化部位の変異体を用いる解析を中心に新たな知見が得られた。すでに同定していたリン酸化部位(S62およびS302)をアラニン(A)またはアスパラギン酸(D)に置換する変異はFlcnと結合蛋白(Fnip1およびFnipL)の結合には影響を与えないものの、S62DとS302A変異がAMPKとFlcnの複合体形成を促進することを見出した。これらのリン酸化はラパマイシン感受性mTOR複合体(mTORC1)による正の制御を受けていることがわかり、AMPKがtuberin(Tsc2産物)を介してmTORを負に制御していることが知られていることから、リン酸化を介してFlcnがmTORからAMPKへの何らかのフィードバック機構に関与する可能性が示唆された。これまでのところ、どのような様式でFlcnがmTORC1の活性に関わっているのかまだ明らかではなく、通常の培養条件ではS6K1のリン酸化を含めたmTORC1の機能に対してこれらのリン酸化が顕著な影響を与えている様子を検出するには至っていない。しかしながら、ヌードマウスへの皮下移植実験において、S62A、S62D変異体が野生型Flcnに比較してより強く腫瘍形成を抑制する傾向を見出しており、何らかの条件依存的にこれらのリン酸化が腫瘍抑制に関わることが予想される。今後AMPKの活性制御に関する検討を含め、腫瘍抑制におけるFlcnの機能をより詳細に調べる予定である。また、HeLa細胞におけるFlcn発現抑制により発現亢進の傾向を示す細胞周期制御分子も見出しており、それらの発現制御とFlcnの関連の解明を進める。
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