2010 Fiscal Year Annual Research Report
細菌性コラゲナーゼの基質結合ドメインを用いた薬物送達システムの開発型研究
Project/Area Number |
20590452
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
松下 治 北里大学, 医学部, 教授 (00209537)
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Keywords | ガス壊疽菌群 / コラゲナーゼ / コラーゲン結合ドメイン / 上皮細胞成長因子 / 鼓膜穿孔 / 血管内皮細胞成長因子 / 血管新生 / 再生医療 |
Research Abstract |
細胞の周囲には、コラーゲンを主成分とする膠原線維やグルコサミノグリカンなどの細胞外マトリックス(ECM)が存在し、細胞の分化・増殖を制御している。ガス壊疽菌群は感染叢周辺のECMを破壊して急激に感染叢を拡大する。本菌群が産生するコラーゲン分解酵素(コラゲナーゼ)のC末端には、コンパクトな(約120アミノ酸残基)コラーゲン結合ドメイン(CBD)が存在する。本酵素はCBDにより自身を膠原線維の表面にアンカーリングし、この不溶性基質を効率よく水解すると考えられる。CBDはβサンドイッチ構造をとり、開口部がCa2+結合部位で閉鎖されているため、極めて安定(変性温度は約95℃)なタンパク質である。そこで、種々の成長因子をコンパクトで安定なCBDと融合して高密度コラーゲン膜に固相化することにより、再生医療に用いることのできる新しい全く機能性材料を作製できると考えられた。まず、表皮成長因子(EGF)とCBDを遺伝子レベルで融合し、組換え大腸菌を用いてコラーゲン結合型表皮成長因子(EGF-CBD)を作製した。分担研究者が作製した高密度コラーゲン膜をEGF-CBDの溶液に浸漬し、ラットの鼓膜穿孔部位にOverlay法およびUnderlay法により貼付した。対側はコントロールとして、自然経過を観察した(各5匹10耳)。7日目に、外耳道側より鼓膜穿孔部を撮影するとともに、外耳道側及び中耳側より鼓膜再生状況を顕微鏡下に観察して、再生状況をコントロール側と比較した。コントロール耳は、1週間後にはいずれも小穿孔が残存したが、EGF-CBDを固相化した高密度コラーゲン膜にて穿孔を閉鎖した場合は、Overlay法およびUnderlay法に関わらず5耳すべて穿孔が閉鎖しており、上皮化が良好であった。また、形成部位の鼓膜以外には異所性増殖など認めず、明らかな副作用も認めなかった。
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