2008 Fiscal Year Annual Research Report
低濃度農薬曝露の次世代影響:大規模先天異常モニタリングに基づく症例対照研究
Project/Area Number |
20590626
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金澤 文子 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 学術研究員 (90201425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯浅 資之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (30463748)
吉岡 英治 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (70435957)
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Keywords | 母子保健 / 農薬 / ヒト次世代影響 / リスク評価 |
Research Abstract |
妊婦を対象とした500人規模のコーホートで、妊娠中の母の甲状腺ホルモン並びに児の出生時の甲状腺マススクリーニングのデータがある対象のうち70人の母体血について、GC/MS/MSによる一斉分析によって難分解性有機塩素系農薬の血中濃度を得ることができた。分析対象物質は、ドリン類(アルドリン、ディルドリン、エンドリン)、クロルデン類(cis-クロルデン、trans-クロルデン、オキシクロルデン、cis-ノナクロル、trans-ノナクロル)、ヘプタクロル類(ヘプタクロル、cis-ヘプタクロルエポキシド、trans-ヘプタクロルエポキシド)、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、DDT類(o, p'-DDD, p, p'-DDD, o, p'-DDE, p, p'-DDE、o,p'-DDE、p,p'-DDE、o,p'-DDT、p,p'-DDT)、マイレックス、ヘキサクロロシクロヘキサン(α-HCH、β-HCH、γ-HCH、δ-HCH)であった。 検出率100%であった物質は、cis-クロルデン、オキシクロルデン、cis-ノナクロア、trans-ノナクロア、p, p'-DDE、o, p'-DDT、p, p'-DDT、ディルドリン、HCB、cis-ヘプタエクロルポキシド、マイレックスであった。マイレックスは日本での使用実績のない農薬である。最も高濃度に検出された物質は、p, p'-DDE(DDTの代謝物)であり、平均±標準偏差で893±745pglwet-g、最小値が190pglwet-g、最大値が4600pg/wet-gであった。次いで、β-HCHの検出濃度が高く、平均±標準偏差で109±36pg/wet-gであり、最小値が32pg/wet-g、最大値が770pg/wet-gであった。 新生児の血中遊離型サイロキシン(FT4)濃度との相関を示した物質は、マイレックス(r=0.255, p=0.03)とβ-HCH(r=0.209, p=0.08)であった。母体血の甲状腺刺激ホルモン(TSH)、およびFT4との間には統計的に有意な相関を検出しなかったが、わずか70例の測定によって母体血中の農薬濃度と新生児の甲状腺ホルモン濃度との相関性が示された。今後、対象数を増すことによって農薬曝露と甲状腺機能の関連がさらに明確になると考える。
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