2009 Fiscal Year Annual Research Report
低濃度農薬曝露の次世代影響:大規模先天異常モニタリングに基づく症例対照研究
Project/Area Number |
20590626
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金澤 文子 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 客員研究員 (90201425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 英治 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (70435957)
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Keywords | 難分解性有機塩素系農薬 / DDT / 妊婦 / 次世代影響 |
Research Abstract |
難分解性の有機塩素系農薬は内分泌撹乱作用を持つと懸念されている。日本を含み多くの国で使用されなくなってから数十年が経過しているが、未だに環境中から検出されている。本研究の目的は北海道での妊婦の有機塩素系農薬曝露状況把握と次世代影響を明かにすることである。2002~2005年に札幌市の-産院で採取した149名の妊婦(年齢,30.9±4.8;BMI,21.4±3.5)の血液中の有機塩素系農薬(29物質)について濃度測定をし、自治体によるマススクリーニングのデータおよび医療記録を利用し、妊婦の血中有機塩素系農薬濃度と妊婦と新生児の甲状腺機能、児の体格との関連を検討した。 妊婦の血液から検出された物質の濃度の高い順に名称と濃度(中央値,pg/g wet)を示す。p,p'-DDE(628)、β-HCH(158)、HCB(107)、trans-nonachlor(68.9)、oxychlordane(41.4)が上位5物質であった。また、国内で使用実績がないにもかかわらず、マイレックス、Parlar-26、Parlar-50が検出された(検出率、99.3~100%)。血中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)と遊離甲状腺ホルモン(FT4)濃度のそれぞれの4分位で分割してグループ化し、群間の農薬濃度を比較した。妊婦の場合、TSH濃度が低い群と高い群の農薬濃度が高く、中間の二つの群では低いというU字型の影響を示唆する結果を得た(Dieldrin、p=0.02;DDT類、cis-Heptachlorepoxide, Parlar-26およびParlar-50、P<0.1)。また、出生時体重が大きい群ほどの母体血中のp,p'-DDE濃度が高いという傾向性を認めた(p=0.03)。異物代謝に関わる酵素のうち、第2相酵素のひとつのキノンオキシドレダクターゼ(NQO-1)のC609Tの遺伝子多型を妊婦について見た場合に、CC型(n=44)に比べてCT型+TT型(n=99)のほうがp,p'-DDE濃度が低いという結果を得た。これらの結果には、喫煙、出産歴、有機塩素農薬とPCB汚染のレベル(有機塩素系農薬汚染と正の相関性がある)が交絡している可能性があり、複数の要因を加味した解析によって、妊婦の有機塩素系農薬曝露による児への健康影響を明らかにしていく必要がある。
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