2008 Fiscal Year Annual Research Report
前海馬台、傍海馬台領域における神経結合関係の形態学的解析
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20591032
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
本多 祥子 Tokyo Women's Medical University, 医学部, 講師 (40287313)
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Keywords | 記憶 / 前海馬台 / ウイルスベクター / GFP / 単一神経細胞 / 軸索 / 内側嗅内野 / 脳梁膨大後部皮質 |
Research Abstract |
近年アルツハイマー病初期の脳で、嗅内野や前海馬台を含む海馬周辺皮質領域の著しい変性が報告されており、未だ未解明なこれらの脳領域の神経結合関係を明らかにすることが記憶障害の発生機序や症状と障害部位の関係性を解明するためには必須である。本研究は特に前海馬台、傍海馬台領域の線維連絡を、様々な神経特異的標識法を用いて詳細に明らかにするものである。具体的にはラットを用い(1)まず前・傍海馬台への入力源となる皮質下領域を全て同定し、各入力源から前海馬台内部(層、部位)への軸索投射様式を明らかにし、(2)次に前・傍海馬台内部における各出力先への起始細胞の種類(層)と分布様式を明らかにする。(3)各層における様々な投射細胞の突起形態の全体像を単一細胞レベルで解析する。平成20年度は、神経細胞高親和性の組換えウイルスをベクターとした蛍光タンEパクGFP遺伝子導入法により、前海馬台各層における単一神経細胞の軸索突起形態全貌の可視化を進めてきた。その結果、中隔側前海馬台のIII層、V層、VI層細胞それぞれについて、単一細胞の軸索側副枝がどのような領域に広がるかを初めて明らかにすることができた。III層の単一細胞の一例では、同側の内側嗅内野II, III層へ投射する3本の軸索側副枝の他、反対側への交連線維1本、細胞体近傍の前海馬台深層に投射する2本の短い反回枝が観察された。V層の単一細胞からは同側脳梁膨大後部皮質の深層へ投射する4本の枝と2本の反回枝が、VI層の単一細胞からは同側内側嗅内野深層および皮質下へ投射する枝各1本ずつと2本の反回枝が出ていた。更に内側嗅内野浅層、深層および脳梁膨大後部皮質深層における軸索側副枝の終末分岐形態にはそれぞれ特徴が認められ、前海馬台から他皮質領域への情報伝播様式はIII、V、VI層の各細胞間で異なることが分かった。
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