2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムオキシゲナーゼ1の造血系および感染免疫系調節機構における生理的重要性
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20591275
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小泉 晶一 Kanazawa University, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授 (50019973)
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Keywords | ヘムオキシゲナーゼ / 炎症 / 骨髄移植 / 乳児白血病 / 内皮細胞 / 血管炎 / GVHD / 腎尿細管 |
Research Abstract |
ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)はヘムを一酸化炭素(CO)とビリルビンとフェリチン(Feより誘導される)に代謝する律則酵素である。われわれが世界で初めて発見した「ヒトHO-1欠損」症例(1999)は2歳頃からの全身性慢性炎症が増悪し,6歳で死亡した。本症例のこれまでの詳細な病態解析とin vitro実験的研究によって、HO-1の、生体へのストレス防御因子としての役割を解明し、下記の研究成果を得た。(1)患児の生検材料やリンパ球細胞株でHO-1の発現が認めらないことと、HO-1遺伝子の異常から本疾患が確立された。(2)HO-1欠損症の臨床特徴は、主として造血系単球と血管内皮細胞及び腎尿細管細胞の障害に起因する。(3)HO-1欠損症では、外因性酸化ストレスによって、全身性炎症と凝固線溶糸の著しい亢進を惹起し、ストレスが長期に継続すると、免疫系や凝固線溶系が消耗、破壊される。(4)単球細胞表面抗原の異常、貪食能の低下が認められた。また、単球のHb/Hp/CD163コンプレックスがHO-1誘導と強く相関することがわかった。(5)各種腎疾患の生検材料、及びin vitro細胞株の検討から、HO-1は腎尿細管上皮がストレス防御に有効に働いていることが強く示唆された。(6)マウス骨髄移植実験で、IL-17ノックアウト(KO)マウス骨髄細胞と野生型(WT)マウス骨髄細胞を比較すると、IL-17KO細胞を移植した場合慢性GVHDが軽減された。即ち、IL-17細胞は移植中期から後期におけるGVHD病態形成に深く関与しており、IL-17を中和することによる慢性GVHDの予防・治療への応用が期待される。(7)GM-CSFで大量培養した樹状細胞にPUVA処置を施すことによって"制御性"樹状細胞へ、の形質転換が容易に可能であることが示された。この制御性樹状細胞はリンパ球混合培養反応(MLR)を有意に抑制したことから、GVHD予防の臨床応用に期待が持たれる。(8)乳児白血病のCD10表面抗原陰性列では広範な遺伝子メチル化が関与していることが知れた。
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Research Products
(5 results)