2008 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症の記憶障害に関わるニューロプラスチンの役割-基礎的臨床的研究
Project/Area Number |
20591377
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
秋山 一文 Dokkyo Medical University, 医学部, 教授 (40150990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 淳 獨協医科大学, 医学部, 助教 (00453407)
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Keywords | 統合失調症 / 記憶障害 / ニューロプラスチン / 認知機能 / 神経可塑性 |
Research Abstract |
研究実施計画ではモリス水迷路試験を記憶獲得モデルとしてニューロプラスチン(NPTN)の役割を検討する予定であったが、本年度は神経可塑性と記憶のモデルとされる扁桃核キンドリングラットに於いてNPTNの遺伝子発現をin situ hybridizationによって検討した。左側扁桃核に深部電極を挿入、後発射を伴う電気刺激の反復によってキンドリングを完成させ、刺激による全身痙攣誘発から経時的に定量し、30分後、1時間後に於いて海馬歯状回でNPTN65のmRNAが有意に増加していた。同じ条件でNPTN 55のmRNAは変化がなかった。 また、後発射を誘発する初回の左側扁桃核への電気刺激ではNPTN 65, NPTN 55のいずれのmRNAも変化がなかった。この所見はニューロプラスチンが記憶に関係する分子の候補として有望であることを示唆している。 獨協医科大学病院に通院中または入院中の統合失調症の患者、及び健常対照者を対象にして、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)の評価と血液からのDNA抽出を集積している。統合失調症では陽性・陰性症状評価も行った。2009年4月現在まで健常対照者39名、統合失調症患者45名でBACSの評価を終え、健常対照者に比べ統合失調症では言語性記憶で-41%、ワーキングメモリーで-31%、運動機能で-31%、言語意味流暢性で-24%、言語文字流暢性で-32%、注意で-44%、遂行機能で-25%とのいずれの項目でも有意に低下していた。この所見は統合失調症の認知障害を一層裏づけるものである。今後は例数を増やすとともに、認知機能とNPTN遺伝子多型について更に検討していく予定である。
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