2008 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症モデル動物および死後脳における神経病理学的検討
Project/Area Number |
20591400
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
入谷 修司 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (60191904)
|
Keywords | 神経病理学 / 統合失調症 / モデル動物 / カルビンディン / チロシン水酸化酵素 / 免疫組織学 |
Research Abstract |
今研究の要旨は、統合失調症の病態解明のため、疾病モデル動物を用いてその脳において細胞構築像を観察し神経発達障害仮説を検証し、さらにそれらの観察成果に基づき統合失調症患者の死後脳においても神経病理学的検索をおこない、この疾患の脳組織学的側面から病態把握をすることにある。今年度の柱の一つは、統合失調症研究のゲノム研究で得られた成果を組織上の変化として捉えることである。現在報告されている統合失調症の有力なリスク遺伝子のひとつに14-3-3εがありこれは脳神経の発達に重要な役割を担っていることが分かっている。その14-3-3εのノックアウトマウスを用いてその脳においてどのような神経細胞構築の問題があるかを組織学的に検索した。ノックアウトマウスの脳を組織固定後取り出し20μm厚の薄切切片を作成した。免疫組織学的技法を用いて、GABA系ニューロンの指標としてCalbindinD28k (CaBp)ドーパミンニューロンの指標としてTyrosine Hydroxylase (TH)を染色した。その結果、CaBpは野生型マウスに比して、14-3-3εhetero KOマウスでは、前頭葉および辺縁系等の皮質部位でCaBp陽性細胞数の減少、軸索突起の減少が認められた。抑制系神経ネットワークの発達不全が示唆された。THは野生型マウスに比して14-3-3 ε hetero KOマウスでは、ドーパミンの起始核において細胞密度の減少、樹状突起の減少が認められ、また投射経路である前頭葉皮質、辺縁系皮質においてもTH陽性線維は疎なネットワークを形成していた。これらの事実は、統合失調症の神経発達障害仮説を支持する所見と考えられ、ゲノム研究の成果が実際の組織上で検証された重要な所見である。今後これらの組織上での変化を、統計学的評価等の客観的指標を検討する予定である。
|
Research Products
(1 results)