2008 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍に対する放射線治療効果を血漿中腫瘍細胞DNAの経時的定量によって早期判定する
Project/Area Number |
20591499
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
大村 素子 Yokohama City University, 医学部, 助教 (70244506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
康 芸 横浜市立大学, 医学研究科, 特任准教授 (60332607)
幡多 政治 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (60285145)
小池 泉 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (00295495)
井上 登美夫 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (80134295)
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Keywords | 放射線治療 / 血漿DNA |
Research Abstract |
我々は先行研究において放射線治療開始後、数日以内に、患者血漿中cell-free DNAが増加した後、漸減することを見出した。そこで、「放射線感受性が高い腫瘍ほど治療早期から腫瘍細胞が崩壊、これに伴い腫瘍細胞中のDNAが血漿中に流出、ついで早期に減少、消失していくのではないか」との仮説を立てた。この血漿中DNAの治療開始早期における変動の解析によって、放射線治療の効果を早期に診断する方法を検討している。平成20年度は腫瘍モデル動物による実験を行った。ヒト肺扁平上皮癌由来SQ5細胞をマウス大腿部に移植し腫瘍を形成させた。マウス血漿中の腫瘍細胞特異的DNA(ヒト細胞由来DNA)と、腫瘍細胞以外のDNA(マウス=正常細胞由来DNA)をそれぞれ経時的に測定したところ、いずれも腫瘍の増大とともに増加傾向を示した。腫瘍マウスの血漿中マウス細胞由来DNA量は、正常マウスに比べて有意に多く、腫瘍の浸潤による周囲正常組織の破壊を反映している可能性が示唆された。腫瘍の直径が約8-10mmに達した時期に15Gy一回の照射を行った。腫瘍の成長は一時的に抑制され、再び増大傾向にあった。腫瘍細胞特異的DNAは照射後12-72時間以内に一時的に上昇、その後、減少し、再び増加するパターンが認められた。照射を行わなかった腫瘍マウスと比較して、照射したマウスの腫瘍細胞特異的DNAの照射後の増加傾向は緩慢であった。腫瘍の大きさと血漿中DNAの変化が連動しており、放射線照射による抗腫瘍効果を反映している可能性がある。通常、ヒト臨床検体から得られる血漿中DNAには腫瘍細胞由来DNAと正常細胞由来DNAが混在し、その区別はできない。しかし、今回の動物実験から放射線照射によって腫瘍細胞由来DNAもマウス細胞由来DNAも、変動することから、放射線照射によって腫瘍細胞の崩壊のみならず、周囲正常組織の崩壊や腫瘍組織内の間質細胞の崩壊が起こっていると考えられる。DNA総量は、腫瘍特異性は欠くものの、腫瘍細胞だけではなく、一塊の腫瘍としての生体内での動態、病勢を示すマーカーとして応用できる可能性があると考える。次年度は実験モデルで仮説の妥当性をさらに検討し、臨床研究に移行する。
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Research Products
(1 results)