2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変合併肝切除術後に効果的な熱量補給を可能にする新組成脂肪乳剤の有用性
| Project/Area Number |
20591553
|
|---|
| Research Institution | Wakayama Medical University |
|---|
Principal Investigator |
瀧藤 克也 和歌山県立医科大学, 和歌山県立医科大学医学部, 講師 (00254540)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 司 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50244744)
中村 公紀 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80364090)
松田 健司 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30398458)
奧 喜全 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (10453185)
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
|
|---|
| Keywords | 脂肪乳剤 / 外科栄養 / 肝硬変 |
|---|
| Research Abstract |
われわれが長年研究を続けてきたphosphatidylglycerol(PG)で乳化し、中鎖脂肪酸トリグリセリド(medium chain triglyceride、MCT)を50%含有した全く新しい静注用脂肪乳剤を作成し、TAA誘発硬変肝切除モデルに対し120分間持続投与し、その有用性を従来の脂肪乳剤と比較した。この新組成PG乳化MCT/LCT脂肪乳剤では、従来の脂肪乳剤のように血清中性脂肪の上昇はなく、投与後の経時的変化は正常肝に投与した時と同等であった。さらに、血清遊離脂肪酸および血清リン脂質の上昇も抑制された。投与した脂肪乳剤が血中でリポ蛋白化され、すみやかに肝に取り込まれ、投与した中性脂肪が有効に利用されているか、電子顕微鏡による肝の形態学的観察を行ったところ、新組成脂肪乳剤では肝細胞内に取り込まれた脂肪粒子はその代謝終末像とされるラメラ体および液胞となり、肝細胞内で十分代謝されることが判明した。本年度は、投与した脂肪乳剤中の中性脂肪がエネルギー器質となり得るか、脂肪乳剤を0.6g/kg/hの速度で1日量の1/12(平均5.8ml)を120分間持続静注し、120分後に肝組織をfreeze-clamp法で100mg採取し,肝組織内ATP,ADP,AMP量を高速液体クロマトグラフィー(LC9A,島津製作所)を用いて測定した。肝組織内ATP量は従来の脂肪乳剤と差を認めなかったが、energy chargeは新組成脂肪乳剤で高い傾向を示した。この新組成脂肪乳剤は肝硬変肝切除後でも投与後は速やかに代謝され、傷害肝においてもエネルギー源となり得ることが立証され、従来の脂肪乳剤が禁忌ないし慎重投与としてきた肝硬変患者に対する肝切除術後でも安全にエネルギーを供給できる新しい脂質栄養素材となり得ることが判明した。
|
