2008 Fiscal Year Annual Research Report
周術期に術後鎮痛のために投与されたフェンタニル乳汁中移行に関する検討
Project/Area Number |
20591837
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永田 悦朗 Kagoshima University, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (50437977)
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Keywords | フェンタニル / 持続硬膜外投与 / 乳汁中分泌 / LC-MS |
Research Abstract |
手術後の疼痛管理を目的としたフェンタニルの持続硬膜外投与が帝王切開後の母体に行われる際のフェンタニル乳汁中分泌を把握することは、新生児が経口摂取する可能性のあるフェンタニルの量を知ることにつながる。今回の研究結果として、乳汁中フェンタニル濃度は、術後フェンタニルを20μg/時間で持続硬膜外投与した群で開始後1時間において0.08ng/mlであり、4、6、12、24時間の時点では検出限界濃度以下であった。術後フェンタニルを10μg/時間で持続硬膜外投与した群ではどの時点でも検出できなかった。一般的に、術後鎮痛を目的としてフェンタニルを静脈内投与した場合の血液中効果部位濃度としては、1ng/ml以上が必要であり2ng/ml以上では呼吸抑制発現の可能性があるとされている。今回の研究結果から、乳汁中分泌濃度は非常に低いものでありフェンタニルが経口摂取された場合に血中に発現するのはさらに低濃度であるということを考えると、臨床的に母体に対して良好な鎮痛を目的として投与される20μg/時間のフェンタニル硬膜外投与は新生児に授乳を行っても問題のない濃度であるといえる。今回の研究では、乳汁採取できた検体数が少なかったことと、乳汁が採取できても1回あたり採取できる乳汁量が必要とされた3mlに満たない検体が多く濃度測定を行うに当たって測定データが不安定となってしまった可能性がある。また、LC-MSの精度を上げて再測定ということも考慮できるが、今回の乳汁中0.08ng/ml以下の数値の検出ができたとしても、結論としての新生児授乳が比較的安全であるというということに変わりはないと思われる。今後、このフェンタニル移行の過程を1、硬膜外から血液中への移行、2、血液中から乳汁中への移行として二つに分けて検討する有用性があると思われる。母体に有効な鎮痛が得られる濃度で呼吸抑制等を起こさない濃度、そして新生時の授乳においても問題のない投与量について検討する余地がある。
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