2010 Fiscal Year Annual Research Report
子宮頸部細胞診検体からのHPV組み込み型子宮頸癌ハイリスク者診断法の開発
Project/Area Number |
20591948
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本郷 淳司 岡山大学, 病院, 講師 (10301293)
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Keywords | HPV / IGF-I受容体 / p53 |
Research Abstract |
我々は子宮頸癌培養細胞にて、HPV E6がp53蛋白を分解不活化することを介して、IGF-1受容体(IGF-IR)の過剰発現を生じている事を示した。この系を応用すると、IGF-IR発現が検出困難なE6蛋白発現のサロゲートマーカーになると着目し、同様にHPV E7のサロゲートマーカーとされるp16蛋白の組織内発現部位の局在をヒト子宮頸癌組織、子宮頸部異型上皮組織を用いて検討した。軽度および中等度異型上皮では、IGF-IR、p16の発現は上皮内の中層から表層に存在したが、高度異型上皮や癌組織では基底細胞層から始まり、全層に渡っていた。このことはHPVの宿主染色体への取り込みの有無による、E6/E7遺伝子産物の上皮内発現部位と一致しており、IGF-1受容体およびp16の発現を免疫組織染色により判定することは、HPV E6およびE7の発現局在をRNA in situ hybridizationで検討するのと同様の意味合いを持つと想定された。次にこの事象が子宮頸部擦過細胞診に応用出来ないか、同様の検討を液状細胞診検体を用いて行った。当初、正常基底細胞層に発現するp63を指標に、p63蛋白陽性かつIGF-1受容体もしくはp16蛋白の発現細胞の有無にて、HPVの遺伝子組み込みの有無は判定できないかと想定した。しかしながら(1)正常組織を用いて行った検討では、表面からの擦過細胞診ではp63陽性である基底細胞や傍基底細胞の採取量は微少であること、(2)組織内での検討では同一症例でもHPVの組み込みが想定される部位と想定されない部位が多く混在していること、(3)HPVが感染した異型上皮では、p63蛋白の発現は基底細胞や傍基底細胞に限局しておらず、中層から表層細胞にいたるまで、幅広く発現していることが判明した。以上のことから、残念ながら細胞診検体を用いた同様の検討は困難であると結論づけた。しかしながら、異型上皮組織内のIGF-IR、p16の発現局在はHPVの存在様式を反映しており、鑑別診断に有効であり、RNA in situ hybridizationよりはるかに簡便な方法であった。
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