2008 Fiscal Year Annual Research Report
歯質接着界面のナノスケール解析に基づく機能性モノマーの分子挙動解明
Project/Area Number |
20592250
|
Research Institution | Junsei Junior College |
Principal Investigator |
中村 真理子 Junsei Junior College, 保健科, 教授 (90284067)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 靖弘 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (90281162)
|
Keywords | アパタイト / 機能性モノマー / 歯質接着界面 / 分子挙動 |
Research Abstract |
本研究では,機能性モノマーによる樹脂含浸層の形成メカニズムについて検討した. 【材料および方法】1)歯質接着界面の形態学的観察:健全ヒト抜去第三大臼歯から平坦な歯冠中央部象牙質を得た後,クリアフィルライナーボンドII(LBII)とクリアフィルメガボンド(MB)を接着し,象牙質接着界面のTEM観察を行った.2)合成アパタイトによる化学的相互作用の検討:アパタイト粉末および2種類の機能性モノマーPhenyl-PとMDPを用いた.まずHApを各機能性モノマーの15wt%溶液で攪拝,遠心分離した後,エタノールで洗浄ろ過し,乾燥させた.得られた試料について粉末X線回折装置ならびにFT-NMR分光計にて分析した. 【結果および考察】 1)歯質接着界面の形態学的観察:Phenyl-P含有のLBIIでは,接着界面のコラーゲンがむき出しになっていた.一方,MDP含有のMBでは,コラーゲン周囲のアパタイトが残存していた. 2)合成アパタイトによる化学的相互作用の検討:X線回折から,Phenyl-Pではリン酸水素カルシウム水和物(DCPD)が検出され,反応時間の増加に伴いピーク強度も強くなった.しかし,Phenyl-PのCa塩はほとんど検出されなかった.一方,MDPでは24h攪拌した試料のみDCPDに帰属される回折ピークが認められた.また,MDPのCa塩がすべての時間で認められた.31P CP MAS-NMRによる31P原子周囲の局所構造解析を行ったところ,上記のX線回折の傾向を裏付ける結果が得られた. 以上の結果から,次のメカニズムが考えられた.Phenyl-Pは,アパタイトと反応して析出したCa塩が直ちに溶液中に解離し,DCPDの析出を促進する.この反応が進み,コラーゲン周囲のアパタイトを脱灰してむき出しにする.一方,MDPではアパタイトに吸着後,疎水性の層状構造を形成するためアパタイトが残存する.
|