2009 Fiscal Year Annual Research Report
児童虐待防止をめざした青年期の親性育成に関する心理・生理・内分泌・脳科学的研究
Project/Area Number |
20592576
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
佐々木 綾子 University of Fukui, 医学部, 准教授 (00313742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂 浩隆 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (70401966)
中井 昭夫 福井大学, 医学部, 助教 (50240784)
松木 健一 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (10157282)
波崎 由美子 福井大学, 医学部, 助教 (80377449)
田邉 美智子 福井大学, 医学部, 教授 (80227199)
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Keywords | 親性 / 虐待 / 青年期 / 脳機能画像法 |
Research Abstract |
平成21年度は以下のアプローチから研究を実施した。【目的】親性準備性レベルの違いが青年期男女の乳児の泣きに対する生体反応に及ぼす影響を明らかにする。【対象】18~22歳の出産・育児経験のない未婚の研究参加に同意を得た健常青年期男女計46名(親性準備性の高い群:男性13名,女性13名,低い群:男性10名,女性10名)。【データ収集方法】情動喚起課題(乳幼児の映像や泣き声など)を提示し以下のことを行った。実験1:乳児の泣き場面に対する緊張・ストレス・不安状況の指標として心理,生理,内分泌指標を用いた。実験2:乳児の泣き場面に対する感情変化の指標として脳科学(fMRI),心理指標を用いた。その結果,以下のことが明らかとなった。 <実験1>情動喚起課題に対する心理・生理・内分泌学的評価 1)心理学的評価:STAI(状態不安)における各刺激映像間の比較では,高い群・低い群とも「安静」「笑い」より「泣き」の方が有意に高く,親性準備性のレベルに関係なく「泣き」に不安が高まった。感情評定尺度では,高い群は低い群より「当惑する」「不安になる」「同情する」など共感性を表す感情が高かった。一方低い群は「イライラする」「関心がない」など共感性や興味・関心の低さを表す感情が高かった。2)生理学的評価:高い群は「笑い」より「泣き」の方が心拍パワースペクトル(LF/HF)の変化率が有意に高かったことから,泣き場面に対し交感神経の活動性が高まったことが考えられた。3)内分泌学的評価:高い群は「安静」より「泣き」の方が唾液アミラーゼの変化率が有意に高かったことから,ストレスレベルの変化がみられた。 <実験2>情動喚起課題に対する脳科学的評価:聴覚刺激のみ,聴覚と視覚刺激のセッションの両方において,乳児の泣き声課題とホワイトノイズ課題を比較した結果,低い群の方が高い群より右下前頭葉などで強く賦活した。fMRI時の刺激課題に対する感情評定尺度の結果では,低い群は高い群より「イライラする」「関心がない」が有意に高く,一方「同情する」は有意に低かった。 これらの結果から,親性準備性が低い群は乳児の泣きに対する共感性や興味・関心が高い群より低く,不快感を抱きやすい(右下前頭葉の賦活)ことが示唆された。このことは,将来の虐待防止策につながる重要な結果であった。
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