Research Abstract |
2004年国立大学は国立大学法人に移行した。また,2006年教育基本法が改正され大学に関する規程が新設された。これらにより国立大学は,全く新しい指導理念の下に再構築が求められている。他方,憲法23条により学問の自由が保障され,そのために大学の自治が保障されている。これらの関係をどのように捉えたらよいのか。理論のみならず現場でも混乱が生じている。いまや,大学の組織編成に関する理論的研究は,理論的にも実践的にも喫緊の課題となっている。 こうした問題関心に立ち,新しい考え方と従来の考え方の原理的相違,それらと米,豪,独の大学編成の考え方との比較に取り組みたいと考え,それらの資料の収集に当たってきた。さらに,現に,学長選考に紛争を生じている大学の事件を調査し,その原因を理論的に検討した。後者の成果が,「国立大学法人による学長選考と文部科学大臣の学長任命権」(第1論文という,以下同じ)であり,前者の成果が,「国立大学法人化と大学の自治」(第2論文),「国立大学法人化と大学自治の再構築」(第3論文である)。 第1論文は,高知大学学長任命処分取消訴訟を素材とし,新しい国立大学法人法のもとで生じている紛争を考察しながら,国立大学法人法の考え方を検証するとともに,その制度的弱点を明らかにした。第2論文は,大学編成を巡る新旧を比較するための概念として,「大学の自主・自律」,「大学の社会化」,「学長の役割」,「教授会自治」を抽出し,これらを軸に,新旧の大学編成原理の比較を行った。第3論文は,この4概念を手がかりに,日米の大学編成原理の比較を行った。
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