2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20601003
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小松 明 Teikyo University, 医療技術学部, 教授 (80075423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 美穂 東邦大学, 医学部, 助教 (80385567)
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Keywords | プラシーボ / 医療倫理 / 看護倫理 / インフォームド・コンセント / 自律性の原則 / 社会的合意形成 |
Research Abstract |
今年度は看護師を対象に臨床現場の看護師によるプラシーボ使用の現状と使用に伴う看護師の意識について全国的な質問紙調査を行った。全国の300床以上の病院955施設、および東京の20床以上300床未満の病院377施設にアンケート用紙を郵送し、内科系と外科系の病棟の管理師長と臨床看護師から回収した(回収率は20%)。1.プラシーボ使用の現状:プラシーボ与薬は過去1年間に28%の病棟で実施されており、小規模病院ほど実施率が高かった(東京の20-99床の施設では約65%)。対象の症状は疼痛が66%、不眠が27%であり、実施方法は多い方から内服>筋肉注射>坐薬≒静脈注射の順であった。プラシーボ与薬する理由は「患者の訴えが曖昧であったため」(66%)か「実薬を使うと患者の身体に害が及ぶ」(32%)が主であった。プラシーボ与薬は看護記録へ記載することが86%で義務づけられていた。 しかし、プラシーボ与薬に際し、医師による説明は「なし」が51%、「あり」が21%、「場合による」が28%であった。また、62%で同意なしでプラシーボ与薬が行われており、インフォームド・コンセント上問題を含んでいた。2.プラシーボ使用に伴う看護師の意識:86%の者がプラシーボの実施経験を持っており、この10年間でプラシーボを実施した看護師は70%で、そのうち29%は1年以内に実施していた。 47%の者が「プラシーボには効果がある」と答え、48%は「どちらともいえない」と答えていた。プラシーボ与薬について看護師は、「業務とはいえ抵抗感がある」(53%)、「患者にうそをつくのはつらい」 (50%)、「患者の信頼を失うのが怖い」(51%)、「患者が医療不信になる恐れを感じる」(57%)と回答しており、心理的葛藤を感じていた。このように、臨床におけるプラシーボ使用は患者の自律性の原則からみて問題のある処置であり、社会的合意形成のなされることが必要と考えられる。
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Research Products
(2 results)