2008 Fiscal Year Annual Research Report
解熱剤ジクロフェナクの致死性解析を起点とした低副作用化合物のケミカルバイオロジー
Project/Area Number |
20611013
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
ユースフ シセ The University of Tokushima, 疾患酵素学研究センター, 科学技術振興研究員 (80437649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木戸 博 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 教授 (50144978)
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Keywords | インフルエンザウイルス / ジクロフェナクナトリウム / ウイルス放出阻害 / Caチャネルブロッカー / Naチャネルブロッカー / 解熱剤 / ライ症候群 / インフルエンザ脳症 |
Research Abstract |
解熱効果の強いアスピリン、ジクロフェナクナトリウム(以後、ジクロフェナク)、メフェナム酸はインフルエンザウイルス感染時にライ症候群として致死性脳症を起こす危険性から、小児での使用は禁忌とされている。本年度の研究では、1)インフルエンザウイルス感染時にライ症候群を起こす解熱剤と、起こさない解熱剤の細胞障害性の違いを分子レベルで明らかにすることを試みた。具体的にはインフルエンザウイルス感染とジクロフェナク処理によって、ジクロフェナクが引き起こす細胞内のCa2+の変動、ミトコンドリア膜電位の変化、ミトコンドリア膜透過性の変化、アポトーシスの誘導作用を検討した。2)ジクロフェナクを処理することで、インフルエンザウイルスの細胞からの放出が阻害されることを見出した。そこで、この作用が、ウイルスのエクソサイトーシスを阻害するのか、ウイルスタンパク質を修飾して、ウイルス粒子の合成、あるいは放出を阻害するのかについて、検討をおこなった。 検討の結果、ジクロフェナク処理は細胞からのインフルエンザウイルス放出を阻害するが、同様の現象が、Caチャネルブロッカー、Naチャネルブロッカーでも認められた。ジクロフェナク処理は、細胞内Ca2+濃度を低下させ、Ca2+濃度の低下に伴う細胞の円形化を確認した。これらの事から、ジクロフェナクは、Caチャネルブロッカーと類似の作用で細胞内Ca2+濃度を低下させ、ウイルスの放出阻害を引き起こしていると推定した。今後、インフルエンザウイルス感染に伴うミトコンドリア膜の透過性の亢進と細胞内Ca2+の低下の関係、ウイルス放出阻害の機序を解明する。
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