2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子イオンビーム貯蔵リングによる分子-電子・光子衝突過程の研究
Project/Area Number |
20612019
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
田辺 徹美 High Energy Accelerator Research Organization, 名誉教授 (20013394)
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Keywords | 原子・分子物理 / 化学物理 / 加速器 / 生体分子 / イオン貯蔵リング / 電子-イオン衝突 / 電子捕獲解離 / 光子-イオン衝突 |
Research Abstract |
1.プラス1価のDNA2量体イオンビームと電子ビームの衝突によって放出される中性粒子の生成率を電子のエネルギーを変えて測定した。その結果、プロトンを付加したアデニン(dAA)とグアニン(dGG)について4.5eV付近に強い共鳴が観測された。この共鳴はシトシン(dCC)では弱くなり、チミン(dTT)では全く観測されない。その原因を追究するために、分子力学の計算でこれらの分子イオンの構造を求めた。その結果、dAAでは二つのアデニン塩基が接近しているのに対してdTTではチミン塩基が離れているという大きな相違が判明した。さらに、これらの分子にナトリュームイオン(Na^+)を付加したプラス1価のイオンについて同様の実験を行った。その結果、Na^+の付加によって共鳴強度が強まることがわかった。特にdTTの場合はNa^+付加によって新たに4.5eV付近の共鳴が現れる。分子力学による構造との比較によって、この原因はNa^+付加によって2つの塩基が接近したためであることが判明した。このように共鳴が塩基同士の相互作用と密接に関連していることがわかった。これらの結果はChemical Physics Letters誌上で発表するとともに物理学会で発表した。 2.緑色蛍光タンパク質(GFP)の発色団分子の負イオンとレーザー光の衝突を研究した。まず、この種の実験技術で問題になっていたレーザー強度のばらつきによるデータの不確定性を解決するためにレーザー強度を各ショット毎に測定してデータを規格化する技術を確立し、スムースな吸収カーブを得ることに成功した。さらに、この吸収カーブの幅が他の研究所において同様の方法で測定された結果と著しく異なるという興味深い事実が判明した。現在、この原因を追究している。
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Research Products
(2 results)