2009 Fiscal Year Annual Research Report
カムランド検出器による150Nd二重ベータ崩壊の研究
Project/Area Number |
20684007
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 斉 Tohoku University, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (60400230)
|
Keywords | 素粒子実験 / ニュートリノ / マヨラナ質量 / 二重ベータ崩壊 / カムランド検出器 / Nd同位体 / Xe同位体 / 液体シンチレータ |
Research Abstract |
ネオジウム(以下、Nd)含有液体シンチレータ(LS)の基本性能を基に、KamLAND検出器への具体的な導入デザインの検討を行った。Nd化合物のKamLANDのLS成分への溶解度を1wt%とし、分析によって得られた透過率、発光量を使用して、ニュートリノ有効質量の予想検出感度を評価した。現在までのところ、Nd化合物の溶解による発光量と透過率の劣化が、到達感度に致命的な影響を及ぼすという結果を得ており、目標感度に到達するためには、着色されないNd化合物の探索、およびKamLAND検出器LS成分以外の有機溶剤の導入を検討する必要があることが判った。 昨年度実施した研究により、キセノン(Xe;2重ベータ崩壊核^<136>Xe)が有力な核種であることが判ってきた。LS中へのXe溶解量から、最も有力な検出器デザインとして、KamLAND検出器の内部に直径3.4mの小規模バルーンを新規に導入する案を採用し、予想検出感度の評価を行った。このデザインを採用することで外部起因のバックグラウンドの抑制、透過率低下による検出光子数(エネルギー分解能)の低下阻止、溶解核種の必要量抑制を実現でき、有効マヨナラ質量0.1eV以下の感度を有することを立証できた。 Xe溶解LSによるKamLAND検出器での二重ベータ崩壊観測を実現するために、具体的な導入方法の検討と実証試験を行った。(1)デカンを主成分とするLSへのXe溶解量(2)発光量(KmaLANDに比して8%低下)・透過率の精密測定(3)小規模バルーンの素材に関して、機械的強度、化学的耐性、Xeガス透過度、光透過率の測定結果から最適な素材を選定・試作(4)Xeガスの溶解・回収方法の確立と実機への導入のための設備設計を行った。これらの研究を通して、KamLAND検出器において観測を実現し約2年間の測定で0.1eV以下の感度を実現する具体的な方法が確立された。
|