2009 Fiscal Year Annual Research Report
木本植物に発達した高効率な有機酸放出を可能にする新奇アルミニウム防御機構の解明
Project/Area Number |
20688006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 裕樹 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (90401182)
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Keywords | 酸性土壌 / 根 / プロアントシアニジン / ボーダーセル / フラボノイド |
Research Abstract |
高濃度のアルミニウム(Al)に対する根伸長抑制の小さい木本種14種中11種が根端表層にプロアントシアニジン(PA)を集積する。一方、Al感受性でかつPA集積性の根を有する木本種を同程度発見していることから、PA集積が高Al耐性発現のための必要因子を含む可能性がある。そのため本研究では、Al耐性が異なりかつ類似のPA根表層分布を示すフトモモ科メラルーカ属樹木2種(Melaleuca cajuputi、M.bracteata)根端におけるPA重合特性と詳細なPAの根空間分布を解析した。24時間の根伸長におけるAl耐性を評価したところ、M.cajuputiでは500μM Alで対照の90%だったのに対し、M.bracteataでは10μM Alで対照の50%、20μM Alで10%だった。根のクエン酸放出量は500μM AlのM.cajuputiと10μM AlのM.bracteataでほぼ同じだった。これらはともにクエン酸放出によるAl耐性を示すダイズを10μM Alで処理した際の放出量の50%以下だった。PAはフラバン3-olをその構造の末端と伸展の構成単位とする重合フラボノイドである。LC-MS解析から、メラルーカ属2種の根端のPAはおもにエピカテキンガレートとエピカテキンの構成単位による重合体であること、M.cajuputiのPAはM.bracteataよりも平均重合度で5倍高く、総構成単位当たり5倍多いことがわかった。また、細胞分裂域を含む根端0-5mmからM.cajuputiのPA重合度が常に高かった。両種のPA構成単位と重合度はAl処理によって大きく変化しなかった。組織化学染色から、両種の主に表皮細胞と根冠側細胞にPAが集積することがわかった。表皮細胞のPAはM.cajuputiでは根端2mm前後から液胞以外の細胞内に局在したが、M.bracteataでは根端4mm前後まで液胞を含む細胞内全体に分布した。M.bracteataの表皮細胞は10μMのAl処理で横方向へ細胞伸長する異常を示した。両種の根冠側細胞は細胞内全体にPAを集積したが、ともにAl処理によって促進的に脱落した。これらの結果から、PAの高重合化と総量増加がAlストレス下での根表皮細胞の伸長維持に重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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