2010 Fiscal Year Annual Research Report
木本植物に発達した高効率な有機酸放出を可能にする新奇アルミニウム防御機構の解明
Project/Area Number |
20688006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 裕樹 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (90401182)
|
Keywords | 酸性土壌 / 根 / プロアントシアニジン / ボーダーセル / フラボノイド |
Research Abstract |
アルミニウム過剰毒性は酸性土壌で発現する植物根の主要な生育障害である。一年生のモデル植物や作物のアルミニウム耐性は根から放出される有機酸とのキレートによる無毒化に主に依存するが、特定樹木種の極めて高いアルミニウム耐性とその生理基盤の理解が不足する。一方、プロアントシアニジンはカテキンなどのフラバノール類が縮合重合したフラボノイドの一種であり、種皮、果皮、樹皮などに集積する。 組織化学染色を用いた細胞学解析により、クスノキ根端に集積するプロアントシアニジンを同定した。その結果、クスノキ根に集積するプロアントシアニジンは、表皮細胞に隣接する側根冠の最内層細胞列に限定され、根の細胞分裂域途上より集積が開始することを明らかにした。さらに、このプロアントシアニジン集積細胞は細胞伸長開始間もなく一部を残して消失することがわかった。HPLC/MSを用いた解析の結果、これらのプロアントシアニジンがカテキンを主構成単位とする重合体であることを明らかにした。根の伸長試験により、クスノキが一年生の耐性作物が抑制される濃度の50倍濃度以上のアルミニウムイオンに長期間耐性であることを示した。解析の結果、クスノキ根の高アルミニウム耐性はアルミニウム排除型である一方、ダイズを用いた耐性比較からクエン酸放出が原因でないことを明らかにした。根伸長ならびに根端細胞のプロファイル解析により、高濃度アルミニウム存在下でもプロアントシアニジン集積細胞の分裂と伸長開始が維持されて表皮細胞の伸長過程が保たれることを明らかにした。さらに、感受性植物根のアルミニウム集積がクスノキ根のプロアントシアニジンの構成単位となるカテキンによって著しく抑制されることを示した。これらの解析結果は、根集積性のプロアントシアニジンがアルミニウムストレス耐性において重要な役割を担うことを示唆する。
|