2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国における地域移動者の社会移動に関する定性的研究
Project/Area Number |
20710196
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
山口 真美 Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization, 研究企画部, 研究員 (60450540)
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Keywords | 農民工 / 地域移動 / 社会移動 / 労働市場 / 職業階層 / 国際研究者交流 / 中国 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代中国において産業構造の変化が人々にどのような社会的地位の変化をもたらしたかを明らかにすることにある。本年度は、今後4年間の研究枠組の検討と予備調査を実施した。 本年度は主に2つの作業を行った。第1に、都市と農村を含む労働市場の職業階層の概念化を行った。この作業のため、労働市場と職業階層に関連する経済学及び社会学の先行研究をレビューし、整理した。さらに、中国の社会学分野の研究で既にいくつか蓄積されている職業威信スコアを参考に、農村から都市への移動者全般に関わる職業階層の構造を整理して今後4年間の研究を遂行する上でのフレームワークを確立する準備を行った。第2に、来年度以降の本格的な調査実施に備えて、各地のカウンターパートと今後の研究体制についての打合せと、若者の学校から職業への移行に関する現地調査に着手した。沿海都市2カ所(江蘇省蘇州市、江陰市)及び内陸農村(四川省成都市金堂県)の学校と企業において教員及び従業員に対するヒアリング調査を実施した。内陸農村では職業高校の就職状況に関して, 沿海部の企業では従業員の教育経験と社内外での職歴についての個別のヒアリング調査を行った。調査を通して、新卒者や従業員が労働市場のどのような職種・階層で就業しているのか、またどのようなルートを利用したのかを初歩的に把握することができた。 今年度の研究成果として, 内陸農村の職業高校は今日, 沿海部の企業の労働力需要を満たすため, 新卒者を内陸から都市へ送り出す重要なチャネルの一つとなっていることが明らかになった。他方で市場の変化による影響を受けやすく、2008年の金融危機前後で就職先が急変していることもわかった。企業調査からは, 一部に上昇的な職業移動を実現している農村出身者の存在も見いだされた。
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