2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国における地域移動者の社会移動に関する定性的研究
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20710196
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
山口 真美 Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization, 研究企画部, 海外派遣員 (60450540)
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Keywords | 農民工 / 地域移動 / 社会移動 / 労働市場 / 職業階層 / 国際研究者交流 / 中国 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代中国において産業構造の変化が人々にどのような社会的地位の変化をもたらしたかを明らかにすることにある。本年度は、沿海部工業地域で働く農村出身者として深〓の日系企業における従業員調査、及び都市部で働く農村出身者として北京市の各種職業従事者へのインテンシブなインタビュー調査を実施した。 個人の社会移動は一般的に、職業的地位の変化によって計測される。工業化・産業化が進む市場経済化過程にある現代中国では、非農就業の機会が増大し、農業出身者に多くの就業機会をもたらすはずだと考えられる。つまり、職業移動、社会移動の実現機会が増大することを意味する。 昨年度実施した企業におけるインタビュー調査では、勤続年数の長い定着層の従業員を中心に職業経歴、家族形態、生活設計についてのヒアリングを行った。その結果、定着層の従業員には、同社に就職後職業の上昇移動を実現することなく勤続する者もいる一方で、一部の従業員は第一線のワーカーとして入社し、管理職や事務職へと上昇的な職業移動を実現していることがわかった。ただし、こうした上昇移動達成者でも、居住形態、家族の形態、子供の教育などの面で市民(地元住民)とは異なる待遇に甘んじているケースがほとんどであった。戸籍の転入を実現した者はごく数名であり、そうでない場合には多かれ少なかれいびつな生活形態、家族形態を余儀なくされている。こうした制約が存在することは、中国社会の市場化が進んでもなお、社会移動のあり方は特殊であり、職業移動からのみとらえることが難しいことを意味しているものと思われる。
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