2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国における地域移動者の社会移動に関する定性的研究
Project/Area Number |
20710196
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
山口 真美 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, アジア経済研究所地域研究センター, 研究員 (60450540)
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Keywords | 農民工 / 地域移動 / 社会移動 / 労働市場 / 職業移動 / 中国 / キャリア・パターン / Uターン就業 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代中国において産業構造の変化が人々にどのような社会的地位の変化をもたらしたかを明らかにすることにある。特に、都市化・工業化と共に縮小する農業部門の出身者がどのような地域間・産業間・職業間の移動を実現しているのかに注目する。労働市場の自由化は「農民工」に代表される農村出身者の自主的な地域間移動を実現したが、彼らは社会的地位の点ではどのような変化を実現しているのだろうか。本年度は沿海部(都市と企業)で就業中の農村出身者への調査と、内陸農村における調査をそれぞれ実施した。 沿海部における就業者調査は、農民工の代表的な就業場所である「都市」と「工場」において行った。「都市」調査は北京のサービス業就業者を中心に行い、「工場」調査は広東省深〓の電子企業の工場におけるインタビューとアンケート調査を実施した。調査の結果、どちらの移動形態においても「都市への融合」ならぬ「出稼ぎの長期化」というべき仮の生活形態の恒常化が起きていることが明らかになった。将来展望については、非雇用の労働者では将来も今の仕事を続けることに対して否定的な者が多数で、一方自営業者では帰郷志向は弱かった。結果として、社会階層の高低に関わらず、被雇用者も自営業者も皆起業を志向するという中国的キャリアパターンが形成されており、社会体制との関連性に注目される。 他方、地域移動者の送り出し地域では近年大きな変化が起きている。四川省成都市郊外の金堂県は1980年代半ばから広東省などの沿海部に多くの労働者を送り出してきた。それが、沿海部の人手不足、金融危機を経て産業の地元移転が起こり、既婚女性のUターンによる地元就業と新卒者の地元就業が増えている。ただし、この二つは異なる要因によって実現しており、それ自体が都市への融合を伴う社会移動の難しさを示しているとも考えられる。
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