2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20720055
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
久下 正史 Kobe University, 国際文化学研究科, 学術推進研究員 (50432555)
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Keywords | 寺社縁起 / 巡礼 / 西国三十三所巡礼 / 秩父三十四所巡礼 / 板東三十三所巡礼 / 観音巡礼 / 在地伝承 / 温泉寺縁起 |
Research Abstract |
2009年度は、2008年度の調査の成果を受け、更に文献資料を中心とした西国三十三所巡礼の開創縁起の資料調査を行った。また、約20例の西国三十三所巡礼の開創縁起について、データ化をおこなった。 その上で、近世を中心として20数種類の西国三十三所巡礼の開創縁起を分析した。結果として、それらは3類型に分類できることがあきらかとなった。一は、従来から一般的に知られている西国札所中山寺の縁起にもとづいたもの、二は、十三権者の巡礼再興と巡礼の功徳を中心として述べたもの、三は、摂津国有馬郡の温泉寺の縁起をおおきく取り込んだものである。二と三は密接な関係にあり、大きくみれば二の類型の中におさめることもできる。 従来、一の縁起が西国三十三所巡礼の開創縁起を論じるにあたっては基本とされていたが、流布状況からみると、近世では圧倒的に二の縁起が多く、西国三十三所の開創縁起を論じるにあたっては、二を基本とすべきであることが明らかとなった。また、近世の縁起の類型から、中世の縁起を俯瞰することによって、中世の縁起も近世の類型一と二の類型のなかで論じることができることも明らかとなり、西国三十三所巡礼の開創縁起の中世から近世の展開過程をも明らかにすることができた。 この上で、秩父三十四所・坂東三十三所巡礼の開創縁起をみると、西国の開創縁起の類型二の展開であることがよりいっそう明確になった。 以上の調査の結果をうけて、仏教文学会においてミニシンポジウム「西国巡礼縁起」(2009年10月)を組み、その成果を公表した。なお、成果の論文としての公表については現在準備中である。論文の公表の後、データベースとして西国三十三所巡礼の開創縁起に関する諸資料を公開する予定である。
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